“そのまま移行”は楽だが効果小 AWSサービスのフル活用にはリスク

 既存システムをAWSに移行する方法は大きく二つある。

 一つはオンプレミス環境のシステムを、基本的に仮想マシン(EC2)のみを使い、AWS上で再現する方法。ランニングコストの削減効果は大きくなりにくいが、移行時のシステム改修は最小限で済む。

 もう一つは、仮想マシン(EC2)に加え、RDBサービス(RDS)などAWSの各種サービスをフル活用し、AWS向けにシステムを再構築する方法だ。移行時にシステム改修や検証が必要になるものの、ランニングコストの削減効果は大きい。

 前者については丸紅の事例を、後者はローランドの事例を取り上げる。

丸紅 仮想マシンのコピーで短期移行

 丸紅は2014年4月に、全業務システムのシステム基盤をAWSに移し替える作業をスタートした。2008年にプライベートクラウドを構築したが、定期的なハードウエア更改とそれに伴う検証作業が重荷になり、AWSへの移行を決めた。

 丸紅が直面した課題は、移行しなければならないシステムの多さと、移行期間の短さだ。同社の橘高 弘一郎氏は「サーバー230台、50システムをAWSに移し替える。現行のサーバー機は2015年に保守期限を迎え、更新予定はない。全システムを改修し検証していると、移行が間に合わない」と頭を抱えた。