「木村岳史の極言暴論!」の木村編集委員と、“ダメシス”シリーズの佐藤治夫氏による対談の最終回では、情報システムの「発注者」の話題に行き着いた。両者は「無責任な発注者がIT業界をダメにする」という考えで一致した。
(構成は清嶋 直樹=日経コンピュータ)
前回は、発注者の責任が話題に上った。
木村:システムを内製するのではなく外注している以上、プロジェクトマネジメントの本質はベンダーマネジメントにある。ベンダーマネジメントの成否がプロジェクトの成否に直結するわけだから、商談のプロセス、特に契約には細心の注意が必要になる。
私の知るところでは、外資系ベンダーと契約するときは注意が必要だ。外資系ベンダーは自社の責任範囲を限定して、プロジェクトのリスクをヘッジしようとしている。契約書を丸のみすると、後でひどい目に遭う。
一方で、日本のいわゆる「SIer」と契約するときも油断はできない。国産ベンダーの契約書では責任範囲の規定が比較的緩やかだが、プロジェクトのリスクをヘッジしようとする点は同じだ。「人月」の見積もりを水増しすることで価格をつり上げて、プロジェクトが“炎上”しても損失が出ないようにする。
断っておくが、ITベンダーがこうした行動を取るのは、商売である以上、当然のことだと思っている。むしろ、ユーザーが甘い。契約交渉はリスクを押し付け合う“戦い”でもあるのだから、甘ちゃんではITベンダーに食い物にされて当然なのだ。
特に、金融機関や公共機関はユーザーとしては“大甘”で、ベンダーにとってはもっとも儲かる客だ。公共機関の場合、プロジェクトは競争入札のために初期費用こそ安くなるが、「丸投げ&ベンダーロックイン」で中長期的に儲けることができる(関連記事:発注者として最低最悪、公共機関のシステムをどうするのか)。