「木村岳史の極言暴論!」の木村編集委員と、“ダメシス”シリーズの佐藤治夫氏による対談の2回目。話題は日本のIT業界独特の構造だとされる「SIガラバゴス」へと移った。

(構成は清嶋 直樹=日経コンピュータ


前回は、日本では「大手システムインテグレータに入りたい」という学生が多いということが話題になった。

「ダメな“システム屋”にだまされるな!」著者の佐藤治夫氏
「ダメな“システム屋”にだまされるな!」著者の佐藤治夫氏
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佐藤:私はITベンダーで新卒採用を担当したことがあり、学生と話す機会があった。面接などの場で「日本のシステムインテグレータとソフトウエアベンダーの大手をそれぞれ挙げてください」と質問することがある。

 日本のシステムインテグレータについては、学生はスラスラと挙げる。NTTデータ、野村総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズなど。ところが、日本のソフトウエアベンダーについては全然出てこない。

米国ではニッチなシステムインテグレータ

 「米国のシステムインテグレータとソフトウエアベンダーの大手をそれぞれ挙げてください」と聞くこともある。学生の回答は日本の場合と全く逆になる。システムインテグレータは全然出てこない。米国のソフトウエアベンダーについては、マイクロソフト、オラクル、アドビ・システムズなどスラスラと挙げる。

 これは学生の業界研究が足りないわけではなく、実際に日米にそういう差があるということだ。私自身、「米国の大手システムインテグレータ」と言われても、EDS(現在はヒューレット・パッカードの一部門)とか、アクセンチュアぐらいしか思いつかない。それだけグローバルで見れば、システムインテグレータというのはニッチな業態だ。

 一方で、日本には世界に通用する大手パッケージソフトウエアベンダーはほとんどない。だがシステムインテグレータはいくらでもあり、企業規模が大きいところもある。学生が「大手システムインテグレータに入りたい」と考えるのも無理はない。

木村:私は「システムインテグレータ」という言葉はなるべく使わず、「SIer(エスアイアー)」と言うようにしている。佐藤さんが言う通り、システムインテグレータというのは日本以外の米国などの国にはほとんどない業態なので、SIerという和製英語で呼んだ方がいい。