今回は「みんなのラズパイコンテスト」の二つの受賞作品を紹介します。優秀賞を受賞したHAKUTO(チーム)とブレッドボードマニアック(チーム)の作品です。

[優秀賞]HAKUTO(チーム)
ラズパイで操縦、撮影できる
月面探査機のプロトタイプモデル

 チーム「HAKUTO」の作品は、X Prize Foundationが主催し、米Google社が協賛する月面ロボット探査を目指す国際的なコンテスト「Google Lunar X Prize」に参加しているものです。このコンテストでは、月面に着陸した無人探査機を着陸地点から500メートル以上を走行させ、指定された高解像度の動画や静止画データを地球に送信する、というミッションで競っています。

 本作品は、月面探査機(月面ローバー)のプロトタイプモデルです。ローバーの操縦や動画や静止画の撮影、送信にラズパイを採用しています。ローバーの操縦には、PCやタブレットを利用します。ローバーの左右の車輪をそれぞれ前後にどれくらいの速さで回転させるかを指示するコマンドを用意し、ローバーに送信します。PCでは、まとまったコマンドをセットで送信するプログラムを実行します。タブレットでは内蔵の加速度センサーを利用して、タブレットの前後左右の傾きに連動してローバーが動く、直感的な操作を実現しています。

 製作に当たっては、まず電気・電子機器だけで構成するブレッドボードモデルにより機能検証を実施(図1)。このモデルを基に、実際に走行可能なプロトタイプモデルを製作しました。作成したプロトタイプモデルは重量1.6kgで、搭載するバッテリーにより連続運用時間2時間を確保しています。

図1●ブレッドボードモデルで基本機能を検証
図1●ブレッドボードモデルで基本機能を検証
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図2●中田島砂丘で実施した走行実験の様子
図2●中田島砂丘で実施した走行実験の様子
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 このプロトタイプモデルを使った走行実験を、2013年8月~9月に静岡県浜松市にある中田島砂丘で実施(図2)。月面にあるローバーを地球から操縦することを想定し、直接視認できない状況下でのテストです。ラズパイから転送した画像だけを頼りに操縦し、500メートル走行させる検証を行いました。気温35℃、路面温度55℃という夏の炎天下の中、ラズパイは順調に動作し、走行および画像撮影、転送の実験に成功しました。

 チームHAKUTOは2015年1月、プロトタイプ後に製作した月面ローバーで、Google Lunar XPrizeの中間賞受賞式の「モビリティサブシステム中間賞」を受賞しています。