「1000万人目は大変ではない。一番最初の人が新しい決済システムを使ってくれるためにはどうすればいいのかを考え抜いた。それがメールを使った決済システムであり、PayPalの誕生だったんだ」

写真●「楽天金融カンファレンス2015」の最後の総括セッションで対談した楽天会長兼社長の三木谷浩史氏と米ペイパル創業者で投資家のピーター・ティール氏
写真●「楽天金融カンファレンス2015」の最後の総括セッションで対談した楽天会長兼社長の三木谷浩史氏と米ペイパル創業者で投資家のピーター・ティール氏
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 2015年2月23日に東京都千代田区のパレスホテル東京で開かれた「楽天金融カンファレンス2015」。金融テクノロジーや新たに勃興するビットコインについてパネルディスカッションが開かれたが、最後の総括セッションには楽天会長兼社長の三木谷浩史氏と米ペイパル創業者で投資家のピーター・ティール氏が登壇した。冒頭の言葉はペイパル創業について問われて、ティール氏が返したもの。ティール氏の投資哲学を如実に表している言葉だ。

 ティール氏は米ニューヨークで弁護士、クレディ・スイスのトレーダーを経てファンドを設立。1998年にインターネット決済を手がけるペイパルを創業した。新しい決済システムを作れないか模索していたティール氏は「既に存在していた電子マネー『サイバーコイン』(提供は米サイバーキャッシュ)や『デジキャッシュ』(提供は米デジキャッシュ、1998年に破綻)がうまく行かないのを当時、注意深く分析した」とディスカッションで語った。

 「そこから見つけたのは決済システムはネットワーク効果を持つということ。円やドルといった通貨を皆が使うのは皆が使っているから。クレジットカード初期のころも、手数料を取られるマーチャントは導入を避け、マーチャントで使えなければ消費者も使わないという、ニワトリとタマゴの関係だった。ペイパルはそこに目を付けたんだ。既に当時皆が使っていたメールと決済システムを組み合わせればいいではないか、とね」(ティール氏)

独占こそが会社の成功を決める、誰もやっていないことをやれ

 ティール氏が実体験で得た知見は2014年に発売された著書「ゼロ・トゥ・ワン」に余すこと無く記されている。パネルディスカッションで著書で何を伝えたかったのかと問われたティール氏はこう答えた。