社内外で積極的にハッカソンを開催している富士通は、その運営ノウハウをまとめている。2014年に約10回のハッカソンを運営した同社の事務局が、独自にまとめた運営術を解説する。STEP3は「当日運営」である。「アイデアカメラ」「スピードストーミング」など、同社が実践している当日の実施作業の内容を紹介する(本誌)。

 当日までに事前準備を入念に行っても、ハッカソンでは必ずと言っていいほど想定外の事件が起こります。言い換えれば、その“予定不調和”がハッカソンの醍醐味でもあります。

 創造的な場を作り、共創を生み出すために何が求められるのか――。今回は実際の事例を基にしたハッカソン当日の運営術を紹介します。

 アイデアを膨らませる「アイデアソンパート」において、短時間で数多くのアイデアを引き出すためのワークのやり方から、私たちの運営の特徴ともいえる、ハッカソンの質を高めるための「ライブプロトタイピング」の内容、そして開発パートから成果発表や表彰に至るまで、場の盛り上げ方や工夫点について述べます。

 これらの工夫には、参加者同士の関係を当日のチーム内だけに終わらせず、その後の共創活動を進めるためのコミュニティーに進化させたい、という私たち運営側の強い思いを込めています。

最初にモチベーションを高め、視点を増やす

 私たちが進めるハッカソンの実施内容を紹介しましょう。図1は2日間で特定のテーマのもと、アイデア出し、チーミング(チーム作り)、開発、審査・発表までのスケジュール例です。課題やテーマを明確にしたハッカソンでは、キーノートを通じた良質なインプットが全体の質を左右する重要な要素です(キーノートの依頼など事前準備の詳細は前回を参照)。

 また、テーマオーナーにも必ずスピーチしてもらい、自身の思いを語ってもらいます。これにより、参加者のモチベーションを高め、課題やテーマに対して多様な視点を持てるようにします。

図1●2日間で開催するハッカソンのスケジュール例
図1●2日間で開催するハッカソンのスケジュール例
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