社内外で積極的にハッカソンを開催している富士通は、その運営ノウハウをまとめている。イノベーションにつながる「共創」の方法論として着目しているためだ。2014年に約10回のハッカソンを運営した同社の事務局が、独自にまとめた運営術を解説する。第1回は企業がハッカソンを開催すべき理由を述べる(本誌)。

 短期間でこれまでにないソフトウエアやサービスを開発するイベントとして、昨今、ハッカソンに国内でも注目が集まりつつあります。ICT企業はもちろんのこと、ICT企業以外や地方自治体、大学が開催し、広がりつつあります(写真1)。本稿では、富士通が数多く実践してきた実例を基に整理した「ハッカソン運営術」を解説します。まずは、なぜ企業がハッカソンに取り組む必要があるのかについて考察します。

写真●ハッカソンの風景(撮影:川本聖哉、出所:あしたのコミュニティーラボ)
写真●ハッカソンの風景(撮影:川本聖哉、出所:あしたのコミュニティーラボ)
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イノベーションを加速する「ハッカソン」

 大企業はイノベーションを起こせるのか――。

 最近、そんな議論を耳にする読者も少なくないのではないでしょうか。多くの企業が既存事業の強化・拡大だけでなく、全く異なる新しい事業領域の創造に積極的に取り組みたいと考えています。一方で、実際に成功しているケースは少ないとも聞きます。

 新規事業では、市場も未成熟でニーズも潜在的、必要な技術も見極められない、といったことが往々にしてあり、大企業の既存事業に比べると総じてマーケットリスクも実現・実行リスクも高くなりがちです。このような理由から、既存事業の規模が大きい大企業には、イノベーションはそもそも難しいとも言われています)