富士通は社内外の人材を含めたハッカソンイベントを多数開催している。本特集は、その狙いと効果に迫る。第1回と第2回は、2014年8月に開催された社内ハッカソン「FUJI HACK」の事例を紹介する。参加者の一人、徳田恒司氏(写真1)の視点でFUJI HACKの様子を疑似体験してもらいたい。

写真1●富士通 社会基盤システム事業本部第二システム事業部の徳田恒司氏
写真1●富士通 社会基盤システム事業本部第二システム事業部の徳田恒司氏
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 「徳田くん、君にハッカソンに行ってもらうよ」

 2014年初夏、富士通の社会基盤システム事業本部第二システム事業部に所属する32才(当時)の徳田恒司氏は、上司に呼ばれ、こう告げられた。「えっ、なんとかソンって、何ですか?」。耳慣れない単語を聞いた徳田氏は、思わず上司に聞き返した。

 ハッカソンは主にIT技術者が集まり、1日あるいは数日間で、あるテーマにのっとってソフトを開発するイベントのこと。集中的にプログラミングすることを示す「ハック(hack)」と「マラソン(marathon)」を掛け合わせた造語だ。上司に言われるまで、徳田氏はハッカソンに参加したことがないどころか、言葉すら聞いたことがなかった。

 徳田氏は入社以来、10年間、ずっと同じ事業部に所属していた。今は、パートナー会社のメンバーを含めて30人ほどのチームのリーダーを務めている。同じ通信キャリアの顧客のシステムを担当しており、3カ月ごとのサービス追加に追われる日々だった。

 基本的に客先に常駐しており、日ごろは同じ本部の社員と交わることはない。その境遇に不満があるわけではなかった。むしろ、長年かけて顧客の信頼を築いてきたことや、社会的に影響のあるシステム開発に携われることを誇りに思っていた。ただ、若干のマンネリも感じていた。