システム稼働後の保守フェーズでも利用部門とITチームの関係を形成しよう。審査ルールによる納得感の高い要望絞り込み、窓口担当の設置、事後調査の実施といった取り組みを紹介する。
利用部門とITチーム(開発担当と運用担当)の協業体制の構築もDevOpsには欠かせない。特に、システム稼働後の保守フェーズにおける利用部門とITチームの関係は、各現場で試行錯誤が続いている。
以下では、稼働後に利用部門とITチームの協業体制を構築するために現場が実践している工夫を紹介する。
リコーは利用部門から次々と寄せられる保守開発要望について、明確な審査ルールを設け、納得感のあるやり方で絞り込む。大成建設は利用部門とITチームの双方に窓口担当を設置し、橋渡し役にする。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、稼働後の事後調査を実施し、次のシステム改善に役立てる。順に見ていこう。
リコー:審査ルールで要望を絞り込み
リコーは、サービスレベルを維持しつつ、年間の運用・保守コストを削減する取り組みを続けている。保守開発についてはコスト上限が設けられ、優先順位の高い案件から実施する。
ここで問題になるのが優先順位の付け方である。利用部門からの保守開発要望をすべて聞き入れると、コスト上限を上回ってしまう。利用部門との関係を維持するには、納得感のある要望の絞り込みをしなければならない。
そこでリコーでは、すべての保守開発要望について、「明確な審査ルールを設けることで利用部門の納得感を高めている」(IT/S本部 Σシステムセンター 所長 佐藤昭浩氏)。具体的には、各要望について保守開発の「実施価値」を定量的に算出する。実施価値は、「重要度」と「影響度」を掛け合わせた値で定義する(図1上)。
重要度は、不具合レベル、工数レベル、頻度レベルの三つの値を掛け合わせたものだ。