通販大手の千趣会は、2006年から情報システムの運用・保守業務を日本IBMにアウトソーシングしている。開発は日本IBMを中心としたマルチベンダーで進める。こうした体制でDevOpsを実践しようとしたところ、大きく二つの壁に直面した(図1)。

図1●千趣会の現場が直面した二つの壁とその対策
図1●千趣会の現場が直面した二つの壁とその対策
ユーザー・ベンダー間、開発・運用間に存在した壁を意識改革とプロセス改善によって解消した
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 一つはユーザー企業・ベンダー企業という企業間の壁だ。発注者と受注者という関係を超えて一丸にならなければDevOpsはおぼつかない。その壁を越えた先に、開発担当と運用担当が共同作業を進めるのは難しいという壁があった。これが第2の壁だ。

 現在の千趣会はDevOpsを実践している。どのようにして二つの壁を壊したのだろうか、順に見ていこう。

壁が責任転嫁を生む

 千趣会のIT部門は、アプリケーション・開発チームと基盤・運用チームの二つに分かれている。これに対応するように、アウトソーシング先の日本IBMもアプリケーション・開発チームと基盤・運用チームに分かれる。

 第1の壁は千趣会と日本IBMの企業間にあった。その壁は、責任や役割の分担から生じたものだが、障害が起きたときは責任転嫁の要因にもなった。「アウトソーシングを始めた直後は責任分界点を決め、IBMが担当する作業は任せようと考えていた。しかし、それは間違いだと分かった。たとえIBMの責任範囲であっても、当社が主体性を持って行動しなければならないと思い直した」と千趣会の美馬貴志氏(経営企画本部 情報システム部 システム開発2チーム)は話す。

 主体性を持つように思い直すきっかけになったのは、システム障害だった。アウトソーシングを始めた後、たびたびシステム障害が起こった。インターネット通販を手掛ける千趣会にとって、システム障害は販売機会の損失に直結する。障害が起こると、どちらの責任かを追求することになる。