開発側(Dev)と運用側(Ops)に横たわる“壁”を崩してDevOpsを実現するにはどうすればいいか。規模の大きな企業の場合、一般的な縦割りの組織体制の下でこの壁を崩すのは容易ではない。DevOpsに積極的に取り組んでいるのが積水化学工業である。
同社は戦略・企画担当を本体のIT部門に配置し、開発と運用担当はNTTデータセキスイシステムズ(NDiS)に移管している。NDiSは、積水化学工業のIT部門が独立して設立された会社。現在はNTTデータが親会社になっているが、「積水化学グループの情報化を担う実働部隊」(積水化学工業 経営管理部 情報システムグループ長 寺嶋一郎氏)である。
NDiSではアプリケーション開発とインフラ運用の組織に大きく分かれていたが、2013年4月、両部門を統合した。開発と運用の間の壁を、組織そのものを統合して消し去るという大胆な方法を選んだのだ。
クラウド移行がきっかけ
具体的に、NDiSの組織統合は以下のようになる。アプリケーション開発を手掛ける「開発統括部」とインフラ運用を手掛ける「基盤統括部」という二つの組織を統合した(図1)。それまでは、開発統括部がアプリの開発や保守開発を担当。基盤統括部はハードウエア調達のほか、OSやミドルウエアの導入・設定などを含めたインフラ構築・運用全般を受け持つという具合に、業務が完全に分かれていた。
この2組織を「技術統括部」として統合し、下(インフラ)から上(アプリ)の層まで、開発から運用まですべての業務を一体となって行う形に改めた。
NDiSがこうした組織統合によるDevOpsに舵を切ることを決めた主な理由の一つに、「業務システムのクラウド移行」がある。積水化学工業は、業務システムをパブリッククラウドサービス(Amazon Web Servicesを利用)に本格的に移行する取り組みを今まさに進めている(図1参照)。2014年2月以降、グループウエアなど情報系システムから順次移行する。