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 総務省は2015年1月28日、NTT東日本およびNTT西日本(NTT東西)による光回線の「サービス卸」が2月1日に始まることを受け、関係する業界団体に対して消費者保護の徹底を要請した。要請先は、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟、日本インターネットサービスプロバイダー協会、全国携帯電話販売代理店協会の5団体。

 サービス卸の開始により、今後は様々なプレーヤーから独自ブランドの光回線サービスが登場する。NTT東西は2014年末時点で約300社と機密保持契約を締結して協議を進めており、既にNTTドコモやソフトバンクBBをはじめ、ビッグローブ、ソネット、ニフティ、ピーシーデポ、U-NEXTなどが独自サービスの提供を表明済みである。

 ユーザーにとってサービスの選択肢が広がるのは喜ばしいことだが、一方で様々なプレーヤーによる顧客争奪合戦でトラブルも懸念される。総務省は2014年、通信サービスにクーリングオフ(初期契約解除ルール)の導入を決めたばかり。苦情・相談件数のさらなる増加はなんとしてでも食い止めたい考えだ。

サービス卸に関する注意事項は4点

 まず懸念されるのは、サービス卸の仕組みの複雑さに起因したトラブルである。総務省が今回、ユーザーへの注意喚起として十分な説明を求めたのは、以下の4点。(1)サービスの提供者がNTT東西から変わる、(2)場合によっては契約中のプロバイダーに解約の申し込みが必要になり、違約金を取られることがある、(3)メールアドレスが変わったり、オプションサービスを使えなくなったりすることがある、(4)サービス卸にいったん切り替え、さらに別の事業者に乗り換える場合は新規契約の扱いとなり、使用中の固定電話番号が変わってしまう――である。

 (1)は、従来の「フレッツ光」と同様、NTT東西のアクセス回線を利用する点に変わりはないが、毎月の料金請求や問い合わせ対応を含め、提供主体はサービス卸の「卸先事業者」に切り替わる。総務省が(1)をあえて掲げた理由はNTTを騙(かた)った勧誘に対する注意喚起と思われるが、提供主体が変わっても開通工事と故障修理だけはNTT東西が担うため、この点においてもユーザーの混乱を招くかもしれない。

 (2)は、契約中のプロバイダーとは別のプロバイダーに乗り換えた場合は基本的に解約の申し込みが必要と考えたほうが良い。この手続きを忘れると、「使っていないのに支払いを続けていた」といったことになりかねない。かたや解約を申し込めば、当然、契約期間によっては違約金を請求される。もっとも、サービス卸を活用した新サービスは多くのプロバイダーが投入するとみられ、同一プロバイダーにおける乗り換えに関しては違約金が免除となる可能性が高い。

 なお、契約期間の縛りは、NTT東西の「フレッツ光」にもある。NTT東日本の「にねん割」のように違約金を設けた料金割引があるが、サービス卸への転用に関しては「違約金を請求しない方向で検討している」(NTT東日本)という。一方、工事費の分割払いの残債の扱いについては、「機密保持契約に該当するため、開示できない」(同)との回答である。ここから先は推測になるが、「機密保持契約に該当する」ということは卸先事業者の判断次第、つまりケースバイケースと筆者は解釈している。

 (3)のメールアドレスやオプションサービスは、プロバイダーを変更すれば原則、利用できなくなる。ただ、メールアドレスをはじめ、サービスによっては有償で使い続けられるものも多いので、プロバイダーに確認して継続の可否を決めることになる。なお、NTT東西が提供するオプションサービスに関しては、卸先事業者に切り替えても、NTT東西との契約を残すことで個別に使い続けられる。とはいえ、どちらの場合も料金の請求は各社からバラバラに来ることになるため、ユーザーにとっては分かりにくい。