企業や自治体が取り組む無料Wi-Fiサービスは、成功事例ばかりとは限らない。無料Wi-Fiで提供するサービスの内容や設備の整備手順などをしっかり検討する必要がある。中でも重要なのは、ユーザーがネットを快適に使える仕組み。サービス開始時の手続きや接続時間の制限などが利用シーンに合わないと、多くのユーザーから支持を得ることは難しい。
2020年に東京で開催されるオリンピックを見据えて、無料Wi-Fiに対する企業や自治体の投資熱はしばらく続きそうだ。しかし利用者が増えている先行事例の陰で、「想像以上に利用者の伸びが鈍い」「本業への波及効果が見えるのには程遠い」と担当者が打ち明けるサービスも少なからずある。
「電波が飛んでいるのに認知されておらず、街頭での宣伝活動や説明が足りない」「地元の商業関係者がよく知らず、普及策の足並みがそろっていない」──。自治体のサービスでは現状をこう見る関係者もいる。集客効果が表れない状況が続けば、無料Wi-Fiへの投資の流れはやがて勢いがなくなる恐れもある。そうさせないためには安易に整備に走るのでなく、無料Wi-Fiで達成すべき目標を明確にして、サービスの内容やどう整備するかを検討することが重要だ。
第1回で紹介したように、無料Wi-Fiのサービス内容や整備方法は、4つの仕組みに分けると検討しやすい。「ネットを快適に使える仕組み」「人が集まる仕組み」「本業を活性化させる仕組み」「投資を抑える仕組み」である。
これは4つの仕組みを考える前提として、サービスエリアに集まるであろう利用者の属性やサービスの使われ方などを想定するとよい(図6)。日本に居住する市民と、一時的な訪日外国人旅行客ではその場所で役立つ情報やサービスも異なる。ネット接続サービスだけをとっても、訪日外国人にとって使いやすい利用開始の手続き方法は異なるかもしれない。こうした利用場面を描くことができれば、サービスの仕組みが考えやすくなる。
4つの仕組みのうち、「人が集まる仕組み作り」については第2回と第3回で先行事例に基づいて説明した。第4回以降は残る3つの「ネットを快適に使える仕組み」「投資を抑える仕組み」「本業を活性化させる仕組み」について、成功の確率を高めるノウハウを紹介しよう。