山内:ところで、そもそもどうしてこんな取り組みをしようと思われたのでしょうか。

濵野:トーマツ イノベーションは2006年の設立以来、企業向けの教育研修事業をメインに展開してきたのですが、その中で二つの限界を感じていました。

 一つは、研修が一過性で終わってしまいがちで、継続性がないことです。研修を受けたときはモチベーションが高まるのですが、その後学習内容がきちんと定着しているか、継続的に実践されているかについては疑問が残っていました。

 もう一つは、時間と場所の制約から、研修の機会が限られることです。業務が忙しいと研修になかなか参加できませんし、地方拠点に配属された人を研修のために呼び集めるのも容易ではありません。

 この二つの限界をどうにか突破できないかと考えて、目を付けたのがモバイルラーニングでした。モバイルラーニングなら、両方に効果があると思いました。

山内:パソコン向けのeラーニングではダメだったんですか。

パソコンでなくモバイルである必要があった

濵野:それも部分的に提供していたのですが、利用数はそれほど伸びませんでした。端末の違いはとても大きいんです。電車に乗って座れたとしても、そこでパソコンを広げてロジカルシンキングを学ぶというのはなかなかできませんよね。自宅でも同じです。家に帰ってくつろいでいるときに、パソコンを広げようという気にはなりにくい。

 でもスマートフォンなら、電車を待っているときにも、乗車後も、自宅でも手軽に学べます。ここに注目して、2014年にモバイルナレッジを始めました。

山内:大学生のほとんどがスマートフォンを持っていたのでしょうか。

濵野:当社の2013年の調査では、99.7%が持っているという結果でした。他社の調査でも、保有率は95%以上という数字が出ていました。だから、端末として問題ないと判断しました。

山内:逆に管理職研修だと、絶対にスマートフォンは使わないという人もいそうですよね。さすがにガラケー(従来型携帯電話)では難しそうですね。