[連載 第3回] 話をしているうちに自然と考えがまとまり、それまで気づかなかった自分自身の心の奥底にある本音や、相手の真意にふと気づくことはないだろうか。話すことで内省が進むことは多い。そこで今回は、「話す」ことによる内省と、それを助ける「良き聞き手」について解説する。

 今回は、「話す」ことについて解説する。前回の「書く」ことと同様に、話すことも内省の手段としては有効だ。話しているうちに、だんだん自分の考えがまとまってくるという経験は、読者の皆さんにもあるだろう。

 先日、筆者らが実施したワークショップでも、このような場面があった。参加していたチームリーダーの一人が、次のように話し始めた。「最近、人事部が時間の管理にうるさいんです。残業時間が規定の時間を超過しているから何とかしろと、繰り返し言ってきます。現在、私が就いている運用の業務では、ユーザーからいろいろな相談事が持ち込まれたり、トラブル対応に追われたりするので、いくら時間があっても足りません。それに加えて、毎日、その日に実施した作業の内容を、全てドキュメントに残さなくてはいけないので、どうしても残業になってしまいます」。

 ここまで話すと、急に声のトーンが変化した。「本当は、ドキュメントなんて必要ないんですけどね。顧客のためじゃなくて、自分たちの言い訳や保身のために証拠を残そうとしているだけなんです。とはいえ、簡単にはやめられません」。チームの非効率なところに自分で気づいたのだ。

 一般的な心理カウンセリングでも、クライアントは、カウンセラーからアドバイスをもらわなくても、話すだけですっきりして、自分がすべきことが整理できていることがある。前述の例と同様に、話すことで自分を客観視できるからだ。つまり、内省が進むのだ。