[連載 第1回] 優秀なマネジャーやチームリーダーは、自らの過去の経験に学ぶ内省力を備えているものだ。ITベンダーや、情報システム部門のチームリーダーなどを対象に、「内省の話し合い」のファシリテーターを6年間にわたり務めてきた筆者が、プロジェクト推進などに生かす内省のコツを指南する。

 プロジェクトを率いている人たちと話をすると、よく耳にする言葉が「もう少し余裕があれば」。こうした「余裕がない」状況で目の前の問題を解決していくことはマネジメント上の大きな課題だ。

 このような余裕のなさの原因として、リソース、予算、時間、技術的問題の発生などが考えられる。これらの問題に直面したとき、忙しさの中で記憶の奥深くにしまい込んでいた出来事や経験を振り返ることで、その突破口が浮かび上がることが少なくない。そこで筆者らは気づきを促すワークショップ「リフレクション・ラウンドテーブル(RRT)」を、6年間で1000人以上のマネジャーやチームリーダーに国内で提供してきた。これは海外のIT企業で窮地に追い込まれた、あるマネジャーが始めた取り組み(最終ページの囲み記事参照)を発端としている。

 人を率いる立場となって日が浅いチームリーダーにこそ、同じ立場の人同士で集まって「内省」の語り合いをしてもらうことを、経営層やマネジャーに筆者はお勧めしている。リソースを効率的に活用したり、個々の力を最大限に発揮させたりといった行動につながる気づきを促すことで、プロジェクトを率いる力量を高められるからだ。内省とはリフレクション(Reflection)の訳語で、職場での自らの行いを振り返り、よりよい自分の在り方を考えてもらうことである。

 大手ITベンダー、一般企業の情報システム部門などのチームリーダーを対象にワークショップを開催してきた経験を踏まえ、どのように話し合ってもらえばよいのか、どんな気づきが生まれるのかなどを解説していこう。

「マネジメント」「気づき」の定義

 ここで読者の皆さんに質問したい。「マネジメントをちゃんとやっていますか」と問われたら、何と答えるだろうか。さらに「この1週間でどんなマネジメントをしましたか」と問われたら、どんな出来事を話すだろうか。