「ビジネスニーズを予測し、先手を打ってビッグデータ基盤を強化していく」――。リクルートグループのシステム基盤を構築・運用するリクルートテクノロジーズ。同社の菊地原 拓氏(ITソリューション統括部 ビッグデータ部 ビッグデータインフラグループ グループマネジャー、写真)は、記者にこう語った。

写真●リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部 ビッグデータインフラグループ グループマネジャー 菊地原 拓氏
写真●リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部 ビッグデータインフラグループ グループマネジャー 菊地原 拓氏
[画像のクリックで拡大表示]

 リクルートテクノロジーズは6年ほど前に、グループのビッグデータ基盤を構築した。米Amazon Web Services(AWS)が当時サービスを開始したばかりのHadoopサービス「Amazon Elastic MapReduce(EMR)」を採用。データ集計のバッチ処理を高速化し、リクルートの各種Webサイトのレコメンド機能を支えるシステム基盤となった。

 実は、ビッグデータというキーワードが米国で盛り上がり始めたのは2010年後半ころ。日本での盛り上がりはさらにその後のことになる。菊地原氏は「将来のビジネスニーズを予測し、先手を打てた」と当時を振り返る。

 この成功に気を緩めることなく、リクルートテクノロジーズはビッグデータ基盤の強化を日々検討し、実際に刷新してきた。「今やリクルートのIT活用の目的は既存ビジネスの強化にとどまらず、新ビジネスの創造に変わった。ニーズの顕在化を待って基盤の強化を検討していては遅すぎる」(菊地原氏)。

Amazon Redshiftでデータ集計処理を高速化

 強化策の一例は、データ集計処理の高速化のためにAWSのDWHサービス「Amazon Redshift」を採用したこと。集計するデータ量の増大や分析する内容の高度化に伴い、従来のEMRを利用した基盤では300台ものサーバーで分散処理させる必要が出てきたからだ。Redshiftの採用によってこの状況は解消し、サーバー台数を大幅に減らせたという。このほかにも、データベースの見直しなどさまざまな強化を実施してきた。菊地原氏は「ビジネスニーズに合致する最新の技術やサービスは、今後も積極的に取り入れる」と話す。

 もっとも、菊地原氏は現状に満足していない。「直近数年は最新技術の導入に意識が傾き、ビジネスのニーズに応えきれていなかった面がある」と反省する。ビジネスの目的に合うかどうかを十分に検討せずに最新技術を基盤に適用し、結局あまり使われずに終わったこともあるという。このため、2014年10月には基盤担当チームの組織体制を刷新した。「将来のビジネスニーズを的確に捉えられる組織を目指す」と菊地原氏は力を込める。

 このビッグデータ基盤の改良の歴史と、今後克服する課題について「ITインフラ Summit 2015」で菊地原氏に詳しく語ってもらう。講演タイトルは「ビジネスイノベーションを支える最新インフラ~変わるビッグデータ基盤の活用」である。システム基盤の刷新を検討中のあなたに、ヒント満載の講演になりそうだ。