ヤフーの100%子会社でデータセンター事業やクラウド事業を手掛けるIDCフロンティア。同社が2012年10月に1号棟を稼働させたのが福島県白河市にある白河データセンターだ(写真1)。地上4階建てで600ラックを設置した1号棟に続き、2014年6月には同じ構造の2号棟も稼働させた。1ラック当たりの平均供給電力が8kWの合計1200ラックを、PUE(電力使用効率)1.2以下を目標に運用している。

写真1●IDCフロンティアの白河データセンターの外観。建屋前面のルーバーは防音のために設置したという。
写真1●IDCフロンティアの白河データセンターの外観。建屋前面のルーバーは防音のために設置したという。
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 「東京から通信ネットワーク的には関東地方の一部よりも近い上に、冷涼な気候を生かせることが決め手だった」。IDCフロンティア 経営戦略本部 経営企画部の山下淳治氏は白河市を選んだ理由を説明する。東京からの遅延時間は東京郊外と同程度の約3.5ミリ秒。これに加えて、外気冷却システムによるPUEの向上や電力供給事業者の分散などが実現できると考えた。

 白河データセンターの用途は三つ。(1)顧客企業のハードウエアを預かって運用するハウジングおよびコロケーションサービスの提供、(2)自社のクラウドサービス基盤としての利用、(3)ヤフーのインターネットサービス基盤としての利用、である。複数の用途を合わせて大規模データセンターとして運用する形態だ。敷地面積は約2万5000平方メートルで、延床面積5900平方メートルの建屋を6棟まで設置可能な設計にしている。

 IDCフロンティアは外気冷却システムを2008年に国内で初めて商用で導入するなど、データセンターの空調で消費する電力を減らす試みを積極的に進めてきた。今回、第2世代の外気冷却システムとしてファンをなるべく使わない新構造を考案し、白河データセンターに採用した。2階と3階に重ねて設置したサーバー室が側面から外気を採り入れ、建屋の2階から4階までを貫く煙突状の空間に排気するようにした(図1)。サーバーからの排気は煙突状の空間を上昇し、屋上から外部に排出される。IDCフロンティアの山下氏は「コンテナ型データセンターの考え方を1棟単位に適用したもので、ビル全体が巨大な空調装置のようなものだ」と語る。

図1●白河データセンターに採用した外気冷却システムの概要。建屋の側面から外気を採り入れ、サーバーからの排気は煙突状の空間に閉じ込めて屋上のチムニーから排出する。(図:IDCフロンティア)
図1●白河データセンターに採用した外気冷却システムの概要。建屋の側面から外気を採り入れ、サーバーからの排気は煙突状の空間に閉じ込めて屋上のチムニーから排出する。(図:IDCフロンティア)
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