2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」が発表されて十数年が経過した。アジャイル開発は、当初は、同じ場所で作業する数人のチームでのみ実践できるものとして捉えられることが多く、エンタープライズにおける開発ではあまり採用されることがなかった。

 しかし、近年アジャイル開発プロセスも成熟してきている。エンタープライズ分野への適用を想定したアジャイル開発手法をまとめて「エンタープライズアジャイル」と呼ぶことがある。今回と次回の2回に分けて、エンタープライズアジャイルの一つである、アジャイル開発プロセス・フレームワークで「ディシプリンド・アジャイル・デリバリー(DAD)」を解説する。

DADが登場するまで

 まずは、DADが登場するまでの背景をおさらいする。1999年にエクストリーム・プログラミング(XP)、2002年にスクラムといったアジャイル開発手法が登場した。これらには二つの共通点がある。一つは、実用的なソフトウエアの開発という目標に向け、チームが同じ場所で緊密に協力し合い、一丸となってコラボレーションしつつ、2~6週間といった短いタイムボックスで、反復かつインクリメンタルに開発を進めていくというものである。

 もう一つの共通点は、これらの開発手法はソフトウエアの開発にフォーカスしているという点である。例えばXPでは、テスト駆動型開発、リファクタリング、継続的インテグレーションなど、ソフト開発の技術的なプラクティスを多く含んでいる。要求が変化した結果としてソースコードも変更されるが、その変更コストをなるべく抑えるために重要なものである。