ソフトバンクはもはや通信会社ではない──米国ではこんな声も聞かれる。ソフトバンクは昨年から、東南アジアの新興企業へ大規模な投資を続けている。米国で成功したモデルを東南アジアで展開する、新興企業が投資対象となる。この事業を手掛けているのはGoogleから移籍したNikesh Aroraで、投資先を分析するとソフトバンクの事業戦略が見えてくる。

インドでeコマース企業に大規模投資

出典: Snapdeal
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 インド出身のAroraが就任して以来、ソフトバンクはインドでの投資を積極的に展開している。2014年10月には、インドのeコマース企業「Snapdeal」に6億2700万ドル投資することを発表。従来と比べ投資金額が増えているのに加えて、目的も大きく変わった。

 SnapdealはNew Delhiに拠点を置く企業で、Kunal Bahlらが2010年に創業した。Snapdealはショッピングモールを運営し(上の写真、女性ファッションのページ)、インターネットで小売店舗と消費者を結び付ける。Snapdealが取り扱う商品は、スマートフォン、タブレット、コンピューター、家電、家具、ファッション、玩具、スポーツなど幅広く、主要ベンダーの製品を取り揃えている。商品件数は1000万点で、出店企業数は10万社に上る。会員数は2500万人で、40か所に配送センターを運営し、5000都市をカバーする。

 ソフトバンクは、eコマース分野でのインド市場の将来性を高く評価している。インドのインターネットユーザー数は世界第三位であるが、eコマース事業は他国に比べ大きく出遅れている。eコマース市場規模で比較すると、中国(市場規模3000億ドル)や米国(同2600億ドル)に対しインドは20億ドルで、大きなギャップがある。

 これを大きなビジネスチャンスとみて、ソフトバンクは大型投資に踏み切った。ソフトバンクが出資したAlibabaは、中国のeコマース事業でトップを走っている。ソフトバンクのSnapdealへの投資は、この成功モデルをインドで展開するという意味を持つ。

 しかし、インドのeコマース市場は競争が激化している。この市場のトップ企業「Flipkart」は、2014年7月に10億ドルの投資を受け事業を拡大強化している。インドで事業を展開しているAmazonは、20億ドルの予算を充て事業拡大を狙う。世界がインドeコマース市場に注目し、大量の資金が流入している。