年の瀬、パーティーの季節である。元々はパーティーなどの集まりで「飲み物は自分で持ってきてね」といった意味で使われていたBYOD(Bring Your Own Drink)だが、モバイル機器の普及とともに、「Drink」を「Device」に置き換え、私物のモバイルデバイスを業務にも使うことをBYODと呼ぶようになった。最近この言葉をあまり聞かなくなった。

 スマートフォンやタブレットの導入事例は急速に増えていることは取材で実感しているが、ほとんどの場合、BYODではなく、会社が支給するスマートフォンやタブレットを使っている。ただ少し前だが、「BYODを禁止されている従業員の6割以上が『自分のスマホを業務利用』」といった記事もある。

 クラウドによる業務系サービスを提供しているベンチャー企業を取材していると、昨年末あたりから急速にスマートフォンからのアクセスが増え、今やPCのブラウザからのアクセスを上回るようになっているという。こうした中のいくつかは、業務とはいえ私物のデバイスからアクセスしていることが想像できる。先の記事のように仮に禁止されていても、水面下で利用している、すなわち企業が意図しないBYODが結構な勢いで進行しているといった仮説が立てられるだろう。

 様々な局面でスピードが求められる昨今、現場の情報化を担っているモバイルデバイスだが、そろそろ“勝手BYOD“のような存在をきっちり整理する時期に来ているように感じる。一つは当然だがセキュリティの問題だ。「モバイルとクラウドにより企業の『壁』が壊された――トレンドマイクロ社長」といった記事が参考になるだろう。

 そしてあまり声高には言われないが、もう一つは労務管理の問題だ。昨年から数百台規模で通信回線契約付きタブレットを導入したユーザー企業の情報システム部門の方は、「いつでも、どこでも仕事ができてしまうため、人事や総務も巻き込んでルールを作る必要がある」と語る。場合によっては既存の就業規則の変更なども必要になるということだ。“勝手BYOD“の存在をなんとなく知っていつつも放置していると、実はこのあたりの整理がいつまでたってもできないことになる。