「文化を変えるのは難しい。現実を見て勇気を持ち、大胆に文化を変えなければだめだ。一度変えるだけでなく、継続的に更新していくことが重要になる」。米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、米ワシントンD.C.で開催中のパートナー向けカンファレンス「Worldwide Partner Conference 2014(WPC2014)」でこう強調した(関連記事:米MSのナデラCEOがパートナー初お目見え、機械翻訳などのデモで歓声)。

 ナデラCEOの言葉は、モバイルファースト、クラウドファーストを実現する次世代のプラットフォームを作っていくために、パートナーが大胆に文化を変える必要があるという主張である。その一方で、「大胆に文化を変えなければだめだ」という言葉は、ワシントンD.C.から1万キロメートル以上離れた日本で起こった、ベネッセコーポレーションにおける顧客個人情報漏洩事件への教訓とも受け取れる。

 2014年7月17日、同事件で業務委託先の元社員が不正競争防止法違反の容疑で逮捕、緊急会見で情報漏洩の事件について陳謝するとともに、事件のお詫び対応として200億円の原資を準備することなどを説明した(関連記事:ベネッセが容疑者逮捕を受け緊急会見、お詫び対応に200億円ベネッセ情報漏洩事件容疑者は「ベテランで中心的な役割」、謝罪会見一問一答)。

 原因の詳細な究明はこれからだが、セキュリティの強化など今後システムに投資する予定はあるかという問いに対し、ベネッセホールディングスの原田泳幸代表取締役会長兼社長は「システムへの投資よりも、(関係者に)徹底した倫理観、責任感を持たせたり、コンプライアンス教育のための費用などに、大きな投資をしたりということだ」と答えた。

 容疑者が逮捕され、対症療法を施すだけで、こうした事件を根絶やしにするのは難しい。ベネッセや業務委託先などの「組織・企業文化」、さらには業界の下請け構造といった「業界内の文化」にまで切り込んで検証し、変革していかないと、真の防止策につながらないのではないか。原田会長兼社長の言葉からも、その一端がうかがえる。

 文化を変えるのは難しい。しかし、こうした事件の後ではなおさら、ナデラCEOの言葉にある「現実を見て勇気を持ち、大胆に文化を変え、継続的に更新していく姿勢」こそが求められよう。今後の進展を見守りたい。