中国3000年の歴史が生んだ孫子の兵法

榊田「今年の大河ドラマは黒田官兵衛で盛り上がりました」

所長「そのようですな。ま、大河ドラマも毎回人気で結構結構。本日はその官兵衛にあやかって、『孫子の兵法』について語ることにしましょう」

榊田「官兵衛が孫子の兵法に通じていたことは知ってます。でも、この特集はビジネス理論についてですよ。なのに兵法だなんて、おかしくないですか?」

所長「ふむふむ。全くおかしくありません。ほら榊田くん、もののたとえでビジネスは戦争だ、と言うではないですか。このたとえが正しいとすれば、古代の戦争に用いた兵法を、現代のビジネスに流用することもできるでしょう」

榊田「なるほど。そういう意図ですね。ボクはてっきりドラマにあやかるんだとばかり思いました」

所長「とんでもない。では、古代中国の叡智である兵法がビジネスにいかに流用できるのか、以下、じっくりと解説しようではありませんか」

 孫子の兵法とは、中国春秋時代(前770~前403)に斉の国に生まれた兵法家・孫武(そんぶ)が書いたと言われる兵法書『孫子』に記述されている内容を指す。

 今から約2500年前に成立した『孫子』は、どのように戦えば勝てるのか、どうなると負けるのか、そのメカニズムを説き明かした、いわば勝つためのノウハウといってもよい。このように戦(いくさ)の方法を示したものを兵法と呼ぶ。その中国初の兵法書が『孫子』に他ならない。

 『孫子』は全13篇からなっていて、第1篇から第3篇が総論、第4篇から第6篇が戦略論、それ以降が戦術論という構成だ(図1)。今回はこの中から、ビジネスに即活用できる『孫子』の名言を中心に紹介したいと思う。

図1●『孫子』の構成
図1●『孫子』の構成
『孫子』は全13篇からなる。全体は総論、戦略論、戦術論に分かれている。
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