トヨタ生産方式とかんばん方式の違いは?

所長「本特集の第9回ではエリヤフ・ゴールドラットの制約理論の話をしました」

榊田「生産管理のための手法でしたね。ボトルネックに着目するのが特徴でした」

所長「もっとも、日本にも世界に誇るべき生産管理システムがあります。トヨタ生産方式がそれですね」

榊田「TPSとも呼ばれてますよね、それって」

所長「その通り。Toyota Production System、略してTPS」

榊田「でも、トヨタと言えば『かんばん方式』が著名かと。トヨタ生産方式とかんばん方式の違いは何なんですか」

所長「ふーむ。両者の区別がつかない、という人も多いかもしれませんね。いいですか。トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車が実施している生産方式の総称です。これに対してかんばん方式はトヨタ生産方式の一手法となります」

榊田「あまたある中の一つだと」

所長「そう。そのためトヨタ生産方式について知るには、かんばん方式といった個別手法を知る前に、まずトヨタ生産方式の全体像について知るべきでしょう」

 トヨタ自動車の源流に遡ると、豊田佐吉という人物に行き着く。この人物は織機の製造販売で一時代を築いた人で、数々の特許や実用新案の取得により「発明王」の名をほしいままにした。その長男が豊田喜一郎だ。

 喜一郎は、父佐吉の豊田自動織機製作所に自動車の研究室を設け、自動車の開発に乗り出す。1930年(昭和5年)のことだ。やがて研究室は自動車部に昇格し、37年(昭和12年)にトヨタ自動車工業株式会社が成立する。

 当時の国内自動車市場は、米国の自動車業界の独壇場だったと言ってもよい。これに対抗するには、技術力(高い品質)とコスト削減(高いコストパフォーマンス)が欠かせない。これらを両立させるためにトヨタで積み重ねられた生産方式を総称して、のちにトヨタ生産方式(TPS)と呼ぶようになる。