ポーターの代表作『競争の戦略』を理解する

 ここは東京白金台――。シロガネーゼが優雅に暮らすこの街に「白金台ビジネス理論研究所」があることは以前にもお話しした。念のため説明すると、その名が示すように、この研究所では世界のビジネス理論の研究とその啓発を行っているのであった。

所長「ふふふ」

榊田「何ですか所長。気味の悪い笑い方をして」

所長「気味の悪いは余計でしょ。いや何ね、まさかこの白金台ビジネス理論研究所の続編がこうして日の目を見るとは思わなかったのでね。で、つい笑みがこぼれたと」

榊田「確かに続編がなければ、ボクもこの晴れの舞台に登場できませんでした」

所長「だろ。んじゃ、キミも気味の悪い笑い方をしなさい」

榊田「はい。ふふふ──って、馬鹿な真似をさせないでください」

所長「そう、ふざけている場合ではありません。記念すべきこの続編第一弾、やはり超著名なビジネス理論を取り上げて、そのエッセンスを紹介したいと思います。選んだのはあのマイケル・ポーターです」

榊田「ということは名著『競争の戦略』が登場する?」

所長「ふむふむ。ポーターとくれば名著『競争の戦略』。当研究所の研究員ならば、そう連想できて当然です。特に本日は、ポーターの『競争の戦略』から、ポーターが提唱した経営戦略の定石である「三つの基本戦略」を解説いたしましょう」

経営戦略の常識「三つの基本戦略」

 マイケル・ポーターは30歳代の若さで米ハーバード大学の正教授になった人物で、世界で最も注目される経営学者の一人だ。ポーターの名が世界に知れ渡ったのは、1980年に出版した著作『競争の戦略』によってだ。本書は現在も「経営のバイブル」と呼ばれているほどの影響力を持つ。

 この名著『競争の戦略』では、企業の経営戦略における定石と、企業を取り巻く環境を分析する手法を解説している。したがって「戦略の定石」と「環境分析の手法」、この2本柱で構成されているのが著作『競争の戦略』だと考えてよい。そして前者に相当する「戦略の定石」の眼目になっているのが、今回解説する「三つの基本戦略」にほかならない。