前回はICT企業の老化を加速するパラダイムシフトの一つとしてクラウド化の影響について解説しました。引き続き今回は、「下流から上流へ」というパラダイムシフトの影響を解説します。

 例えばシステムインテグレータ(SIer)からは、しきりに「上流に行かなければならない」という言葉が聞かれます。ところがここには一つの大きな誤解があります。それは、「下流を連続的にさかのぼっていくだけでは上流にはたどりつけない」ということです。

「問題発見」がSIerにも求められる

 まず、なぜ「上流に行く」必要があると叫ばれているのか、その背景について整理してみましょう。システムの構築では一般に要件定義から基本設計、詳細設計と進んで実際のシステム構築に入ります。そして品質確認としてのテストをした後に導入を開始、保守運用に至るのが一般的なプロセスです。

 「上流」「下流」というのはあくまでも相対的なもので、どこを基準にしているかによって変わってきますが、一般的には要件定義以前の経営課題の把握や、そこから来る業務上の課題、業務の革新のニーズを把握して、それをシステム要件に落とし込むあたりを上流と呼ぶことが多いようです。

 従来、SIerは、あくまでもビジネス上の要求から出てきたシステムの要求ありきでスタートするスタンスを取る、つまり「下流」のみを担当する場合が大半を占めていました。元々、技術的に新規性が高く、専門性が要求される場合はこのような作業体制がうまく機能していました。

 ところが、たいていの会社に多かれ少なかれ情報システムが普及し、システム自体の技術的な特殊性が低下してくると、「導入するだけで差異化ができる」時代は終わり、より経営課題との連携を意識して「なぜ情報システムを導入するのか?」という理由付けが経営的にも必要となってきたのです。