前回はSNSあるいはソーシャル化の流れを「ストックからフローへ」という変化の視点で見ましたが、今回はそれを「閉じた系から開いた系へ」という変化で捉えていきます。ソーシャル化の進展は、単にSNSというアプリケーションの普及だけでなく、ユーザーの考え方や価値観も変えていくものです。これは組織で働く構成員も同じです。

 前回見た「ストックからフローへ」という考え方の転換は、社内SNSの使い方にも表れてきます。ノウハウを蓄積して活用するという従来のナレッジマネジメントの発想から、「知らないことはすぐに聞く」(たとえそれが以前、誰かが聞いたことであっても)という発想が支配的になっていきます。

 このような発想の転換は他にも起こり得ます。もう一つの転換が「閉じた系から開いた系へ」という流れです。ここでの系という言葉は、「有機的に結合された人や組織の集合体」といった意味で用いています。会社などの組織、あるいはその顧客やサプライヤー、パートナーなども含んだその集合体としての「エコシステム」も系として捉えられますし、その構成員としての社員や経営者などの人、あるいはその人が用いる情報システムまで含んだ広い意味で、これらを「系」として考えます。

「開いた系」には明確な中心は存在しない

 まず「閉じた系と開いた系」とのここでの違いを定義しておきましょう。第20回でも解説しましたが、改めて大きく二つの考え方の相違に着目します。一つは「境界線を引くか否か」という相違です。「社内と社外」「組織間の境界」「組織と個人」「ビジネスとプライベート」といった間に明確な線を引くかどうかという違いです。

 もう一つの相違が、引かれた線の両側に「内と外が存在するか否か」ということです。つまり「自分がいる方といない方」、言い換えれば「軸足」がどちらに置かれているかという違いです。したがって「閉じた系」には中心が存在しますが、開いた系には明確な中心は存在しないということです。

 例えば一般に言われる「閉鎖的な組織」というのは上の二つの特徴が当てはまります。またICT業界で用いる「オープンシステム」という言葉や、経営の世界で用いられる「オープンイノベーション」(研究開発や新商品開発などを自社だけでなく、他社や大学などと共同で行うこと)は「開いた系」の例です。