ICT業界が直面している大きなパラダイム変化として、「ストックからフローへ」「閉じた系から開いた系へ」という移行を前々回前回と2回にわたって解説してきました。この二つの変化を具体的にもたらしているのが、SNSあるいは「ソーシャル化」の流れといえます。今回はパラダイムシフトは実際にどのように起きているのかについて整理します。

「量的」な変化と「関係性」の変化

 ICTがもたらす変化として、大きく二つの種類があります。一つは「効率化」や「規模の拡大」といった「量的」な面での変化です。既にに存在している指標、例えば「製品開発期間」とか「ユーザーの数」といったものを改善するのが、ICTの大きな効果の一つです。連絡手段が電話から電子メールになったことで会議日程の調整が劇的に効率化されたことや、ネット販売によって、地方の小規模商店でもリーチできる潜在顧客の数が飛躍的に増大するといったことがその例です。

 ICTにおける「量の変化」の特徴は、ときにそれが10%や20%といった程度ではなく、10倍とか100倍、あるいはそれ以上の変化にもなり得ることです。そのレベルの変化になると、それは単に量的かつ連続的な変化だけでなく、質的な不連続な構造的変化にもつながってきます。

 例えば先の地方の一商店がネットで商売を始めれば、潜在顧客の数は「万」の桁だったものが極論すれば「億」にもなり得るわけで、そうなれば、商品の質やビジネスプロセスもローカルからグローバルに変える必要が出てきます。

 このような変化に加えて、質的な構造的変化の代表的なものが「関係性」の変化です。「組織と個人」の関係性や会社間の関係性がICTによって変化しているというのは、本稿でも述べてきた通りです。SNSやソーシャルの流れも、このような関係性を含む質的な変化をもたらし、特にユーザーの思考回路の変化もたらすものといえます。