本連載では、ICT業界が直面している環境や技術変化に伴うパラダイムシフト、つまり考え方や価値観の変化について解説するとともに、その変化が組織や人のあり方、あるいは働き方に与える影響について述べています。

 今回は、「閉じた系」と「開いた系」の違いを取り上げます。ICT業界全体も、個々の組織で働いている社員も、「閉じた系から開いた系へ」という大きな変化の中で、基本となる価値観や考え方の転換が必要になってきています。

 「系」あるいは「システム」という言葉は、様々な場面で何気なく用いられます。状況によって定義は様々ですが、共通しているのは、複数のものや事象をまとまりとしてとらえた言葉だということです。ここでは、複数の組織や会社、あるいはその構成員としての人の集合体ととらえておきます。具体的には、会社組織そのものも「系」になりますし、その集合体としての業界やエコシステム(複数の顧客やサプライヤからなる、ヒト・モノ・カネの流れのまとまり)なども「系」の例として挙げられます。

「閉じた系」と「開いた系」の違い

 まず今回取り上げる「閉じた系」と「開いた系」の本稿における違いを簡単に定義しておきます。ここでの「閉じた系」は、(1)境界が明確であることと、(2)そこに「内」と「外」がある(中心が存在している)という2点を特徴として持っているものとします。

 ICT業界におけるクラウドコンピューティングやオープンソース、ソーシャル化の進展、あるいは企業経営におけるオープンイノベーションやアウトソーシングの発展というのは、大きな流れとしての業界や企業のエコシステムを、「閉じた系」から「開いた系」に変化させつつあります。