2014年11月、アップルは法人・教育機関向けのプログラムである「Device Enrollment Program」(DEP)を国内でも開始した(関連記事)。DEPはiOSデバイスの運用を劇的に変えるものである。DEPが企業・教育機関でのiPhone/iPad活用をいかに加速するかを説明するとともに、DEPの利用手順や注意点を解説する。なお本記事は、アイキューブドシステムズおよびイシンが2015年2月7日時点での情報を基に、独自に調査・作成したものであることをあらかじめお断りしておく。

拡大するiPhone/iPadの法人向け市場と直面する課題

 日本にiPhoneが上陸し、約5年が経過した。ソフトバンクモバイル、KDDI(au)に続き、NTTドコモも2013年9月20日にiPhoneを発売、日本の大手通信事業者3社がiPhoneを取り扱うようになった。この数年で、国内でも多くの企業や自治体、教育機関がiPhone/iPadを導入し、活用を始めている。

 いまやスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは、個人で数台持つことも珍しくなくなったが、企業や教育機関で利用される場合はその台数の規模が異なる。数千〜数万台のiPhone/iPadを導入するといったことも珍しくない。これらの膨大な数量のデバイスに対して「盗難・紛失対策」「利用状況の監視」「デバイス運用効率化」を行うために、遠隔から集中管理ができるMDM(モバイルデバイス管理)サービスを利用することが一般的になっている。ただし、MDMサービスを導入したとしても、全てが遠隔で済むわけではないのも事実である。

 例えば、iOSデバイス導入時には最低でも初期設定作業が必要となる(図1)。

図1●iOSデバイス導入時の初期設定作業手順(アイキューブドシステムズの資料より引用)
図1●iOSデバイス導入時の初期設定作業手順(アイキューブドシステムズの資料より引用)
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 こうした作業を数千台のデバイスで実施することを想定してほしい。デバイスを並べて1台1台設定する手間が発生することをを考えると、どんなに作業が標準化し、洗練されても、多くの時間を要することは想像に難くないだろう。

 全社員への展開を終えるまでには、「作業場所の確保」「保管先の確保」「作業外注化のための手順標準化」「デバイス配布先の現場社員向け説明会」「説明会と併せた発送時期の調整」など、数カ月にもわたる大変な労力をかけて、やっと現場での利用が始まる。

 また、新規導入時だけでなく、故障時や、回線契約の見直しなど、情報システム部門に返却され代替機に交換・返送する場合にも同様の作業が必要となる。さらに、タイミングによっては、新端末/新OSのデバイスしか入手できなくなるような事態も起こり得る。旧端末/旧OSと新端末/新OSそれぞれへの対応も迫られる。これら連続的な運用を考えるときに、デバイス設定の作業負荷がかかることが、企業や教育機関のシステム管理者・運用担当者にとって大きな負担になってきた。

 iOSデバイスの展開に伴う前述のような様々な課題を解決するのが、2014年11月にアップルが日本国内で正式に提供を始めた「Device Enrollment Program」(DEP)である。

 DEPを利用したい企業は、DEPに対応したMDMサービスを利用することで、個別のデバイスへの設定・各種作業を大幅に省力化し、導入・運用コストを飛躍的に低減できる。実際にDEPを利用すると、図2に示す手順でデバイスの設定作業が可能となり、初期導入時の大半の作業をほぼ自動化/省略化できる。

図2●「Device Enrollment Program」の利用イメージ(アイキューブドシステムズの資料より引用)
図2●「Device Enrollment Program」の利用イメージ(アイキューブドシステムズの資料より引用)
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