携帯電話、そしてスマートフォンの浸透はコンピューター的なデバイスを電源を入れっぱなしで使うのが当たり前という概念を一般的にした。

 Windowsはスマートフォンや携帯電話が一般的に使われるようになるずっと前からスリープ、あるいは、サスペンドと呼ばれる機能をサポートしていたが、少なくとも企業ユースでは使われてこなかった。多くのシステム管理者は、セキュリティリスクを懸念し、使うときにはゼロからWindowsを起動し、使い終わったらシャットダウンすることをエンドユーザーに求めた。

 今後、デジタルネイティブな世代が企業の現場の主戦力になっていくと、こうした面でも理不尽さを感じられてしまう可能性を考えた方がいいだろう。ちょっと前までのパソコンも、さらに、Windowsそのものも、電源を入れてからOSが起動して使える状態になるまでの時間を競っていたものだが、スリープからの復帰についてはあまり語られることはなかった。現状で、3秒かかるものは遅いという認識だが、企業にとってはそんなことはどうでもいいというわけだ。

使いたいときにすぐ使える、というのがベスト

 ただ、仕事にパソコンを使うことを考えたとき、使いたいときにすぐに使えるのはとても重要なことだ。起動の数十秒を待つのが面倒で使わないという選択肢をとられたら、それで何らかのビジネスチャンスが失われることもあるわけだ。

 そういう役割はスマートフォンに委ねているのであれば、それはそれでいい。でも、それだけでいいのだろうか。場合によってはセキュリティリスクをかえって高める結果になってはいないか。スマートフォンとパソコン、どちらも同じくらいの気軽さで使えて、作業に応じて使い分ければ、ある種の相乗効果が生まれる。生産性はデバイスの組み合わせと使い分けによって高まるはずだ。あらゆるデバイスを管理下におくことは重要だが、今後は、管理下においた上でそれをエンドユーザーにどう使ってもらうかを、もっと柔軟に考えていきたいものだ。

山田 祥平(やまだ しょうへい)
1980年代、NEC PC-9800シリーズ全盛のころからパーソナルコンピューティング関連について積極的に各紙誌に寄稿。Twitterアカウントは @syohei