韓国の教育政策を担当する教育部(部は日本の省にあたる)は2016年12月2日、「ソフトウエア教育活性化基本計画」を確定した。2014年2学期から一部小中校で行っていた週1時間のソフトウエア教育を、全学校で2018年から義務化する(中学校は2018年から、小学校は2019年から)。そのために人的・物的インフラを整える。ソフトウエア教育を強化することで、韓国のソフトウエア産業の競争力を確保するというのが主な内容である。

 世界的に人工知能やビッグデータ分析の重要性が高まっていることから、韓国では文系もソフトウエアの基礎を理解すべきとして、小中高校からソフトウエア教育を始めることにした。2014年2学期から、一部の学校でソフトウエア教育(実際にはコーディング教育)を実施したところ、ロボットのソフトウエアをコーディングして動かしてみる、モバイルゲームを作ってみる、といった授業内容が子供たちにとても喜ばれた。

 教育熱の高い韓国らしく、ソウルの富裕層の間では子供を「コーディング塾」に通わせ、学校のソフトウエア授業で高い点数を取るための競争が始まってしまったのは残念だが、それぐらい韓国ではソフトウエア教育が重視されるようになった。

 その背景には、韓国は内需が小さく輸出中心の経済で、今まで輸出しやすいハードウエアばかり重視しソフトウエアはおろそかにしていたことから、押し寄せる人工知能の波に乗り遅れたという反省がある。ソフトウエア教育を通じて「Computational Thinking」ができる人材を養成するという目的もある。Computational Thinkingは、ソフトウエアを組み立てるように論理的に思考し、問題を効率よく解決できる思考能力を意味する。

「教師の教育」も強化

 「ソフトウエア教育活性化基本計画」で大きな変化が生じるのは、小中学校だけではない。教育部は「幼稚園および小・中・特殊学校等の教師資格取得のための細部基準」を改訂し、小学校教師になるための基本履修科目にソフトウエア教育を明記。ソフトウエアの授業ができる程度にならないと小学校教師になれなくなった。中学校の情報科目教師になるための履修科目も細分化し、ソフトウエアの授業ができるようレベルアップすることにした。

 中学校は情報科目の時間に、小学校は担任教師がソフトウエア教育をすることになっている。そのため、韓国全国の教育庁(自治体ごとにある教育を担当する政府機関)は2014年から小学校教師の30%に当たる6万人と、中学校の情報科目担当教師を対象にソフトウエア教育研修を実施してきた。2016年からは情報科目の教師採用を増やし、教師が情報科目を複数専攻する研修も実施することにした。