韓国ではついに「キャッシュレス」生活が現実になっているようだ。韓国銀行が11月2日公開した統計によると、2015年度の全国の銀行ATMは8万6802台で、前年比で472台減少した。ATM台数が減少したのは、統計を集計し始めた1992年以来、初めてのことである。

 銀行口座にお金を預ける、引き出す、振り込みをする、各種税金を払うなど、様々な機能を持つATMだが、韓国ではATMの利用が減少しても維持補修費はかかる。現在、ATM1台当たり年間平均170万ウォン(約15万5000円)の赤字だという。ATMの時間外手数料を値上げしているが、それでも費用を賄えない状態だという。

 韓国では、ATMだけでなく銀行の店舗数も減少している。HANA金融経営研究所の調べによると、銀行店舗数は2014年末のには7398店あったのが2015年末の7261店まで、137店減少した。店舗数が減ったのはソウル市を始め首都圏ばかりで、人口減少よりも、モバイルバンキングやモバイルペイメント、SNSを使った個人間振り込みといったFintech(金融+ICTの融合)の普及により銀行に行く必要がなくなったことの方が大きく影響しているように見える。首都圏の銀行店舗は、2012年から減少し始めた。

 韓国銀行によると、2015年の年間インターネットバンキング・モバイルバンキング利用件数は1億2000万件余り、年平均27%ほど増加し続けている。

 「インターネットバンキングやモバイルバンキングが普及しても、現金を引き出す必要はあるのでATMは生活に欠かせない存在のはず」と筆者は思ったが、自分もキャッシュレスの生活をしていた。韓国ではモバイルペイメントの普及で現金を引き出す必要がないのだ。

 日本でもおサイフケータイが普及し、スマートフォンを使って支払う人が増えているが、韓国はプリペイド(前払い)ではなくポストペイド(後払い)である。筆者は、プリペイドよりポストペイドの方が、楽にモバイルペイメントを利用できると感じている。スーパーやコンビニ、外食、交通費など、全ての支出をモバイルペイメントにし、まとめてクレジットカード払いにしている。

写真●店舗でSamsung Payを利用して支払いをしている場面
写真●店舗でSamsung Payを利用して支払いをしている場面
(出所:サムスン電子)
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 韓国では、1000ウォン(約90円)以上の決済であれば、クレジットカードが使える。都市部からかなり離れた地域でない限り、クレジットカードでの支払いに対応していない店舗はほとんどない。国税庁は、店舗がクレジットカード支払いを拒否した場合、所得隠しの疑いがあるので通報するよう呼びかけているほどだ。クレジットカードの加盟店であれば、ほぼ全てモバイルペイメントに対応している。特別な読み取り端末(リーダー機)がなくても、既存のクレジットカード決済機にスマートフォンを近づけるだけでいいのだ。