韓国の科学技術情報通信部(部は省)は2017年8月23日、新たな電気通信事業法改定案のパブリックコメントを出した。同改定案は、SKテレコムが月2万ウォン(約2000円)で音声通話200~210分、データ通信1GB~1.3GBの「普遍料金プラン」を提供するもの。SKテレコムは市場シェア50%を超えるキャリアであり、インパクトは大きい。

 普遍料金プランは移動通信加入者の平均音声・データ使用量に応じて政府が料金プランを設定できるもので、2年に一度調整するようになっている。現在SKテレコムのプランは音声通話無制限+データ通信1.2GBで月4万ウォン(約4000円)ほどかかる。法律によってSKテレコムは半額のプランを提供しなければならなくなる。

 さらに同部は、キャリア3社に行政処分文書を通知。9月15日から移動通信料金の割引率を現行の20%から25%に引き上げるよう促した。これは5月に就任した文在寅大統領の「家計の通信費負担を軽くする」という公約を守るための処置である。

 移動通信料金の割引は2014年10月に施行された「端末流通法」により、新規加入者はスマートフォン端末価格を最大33万ウォン(約3.3万円)値引きしてもらうか、毎月の移動通信料金を値引きしてもらうかを選択できる。

 割引率が20%から25%になると当然、キャリア3社の利益は減るので、キャリア側は科学技術情報通信部の決定に反発している。しかし政府省庁の決定を覆すには行政訴訟を起こさなければならない。そこまでするのはキャリアとしても負担が大きく、しぶしぶ割引に応じるようだ。

 科学技術情報通信部もキャリアの負担を軽くするため、9月15日以降新規加入者またはMNP(携帯電話番号ポータビリティー)だけ25%割引で、既存の加入者は契約期間が終わるまで20%のままにした。しかし今度は市民団体が反発。25%割引を全移動通信加入者に適用すべきだとして、同部とキャリア3社に圧力をかけている。

 端末流通法によって端末価格の割引は最大33万ウォン(約3.3万円)と決められていたが、この制度も9月30日で終わる。端末流通法は、キャリアが一定期間加入することを条件に端末代金の購入補助金を付ける方式を禁じる法律である。2013年~2014年当時、同じ機種を代理店ごとに違う価格で販売したことが問題となりこのような法律ができたが、「全国民が高いスマートフォンを買わされる法律」だとして批判が後を絶えなかった。