韓国は今年前半、MERS(中東呼吸器症候群)に襲われた。韓国政府が感染者の情報を隠したことで初期防疫に失敗し、2次・3次・4次感染が発生したことで、一時は感染者が増え続けた。政府が情報を隠したため、自分が感染者と接触したとは知らず風邪だと思い込み、病院をはしごして他の患者に感染させたこと。韓国は入院患者を看護師ではなく家族が面倒をみないといけないため、何人もの家族が付き添いとして病室にいたことで大量感染したこと。集団で病院にお見舞いに行く習慣によってまたまた大量感染──。この悪循環が止まらなかったのだ。

 当時のMERS騒動の様子を振り返ってみたい。最初の感染者が発生したのが5月20日、MERSによる死亡者が発生したのが6月1日。しかし韓国政府がMERS感染者のいる病院名や感染者の移動経路などを全て公開したのは、6月7日になってからだった。

 5月20日から6月7日までは、市民の力でMERSの2次・3次感染が発生した病院を突き止め、SNSで情報を共有するしかなかった。韓国政府はSNS上のMERS関連情報はデマであり書き込んだ人を処罰するとしたが、市民の不安は止められなかった。

 6月3日には、Google Mapsに2次感染・3次感染が発生した病院の位置と感染者の移動経路を表示した情報共有サイトが登場した。実際に院内感染が発生した病院にいた人らが、情報を提供した。1週間で約340件の情報提供があり、500万人が閲覧した。市民によるMERSサイトは、ソウル市や保健福祉部(部は省)がMERS対策サイトをオープンしたことで、6月10日に閉鎖した。

写真●地上波テレビ局のKBSは、自社サイトでMERS感染経路を分析したデータを公開した。一目でわかりやすく予防に役立つとしてSNSでリンクする人が増えている。
写真●地上波テレビ局のKBSは、自社サイトでMERS感染経路を分析したデータを公開した。一目でわかりやすく予防に役立つとしてSNSでリンクする人が増えている。
[画像のクリックで拡大表示]

 インターネット新聞は、政府より早く6月4日あたりから、2次・3次感染が発生した病院名を公開しはじめた。地上波テレビ局のKBSは、6月9日自社のWEBサイトにMERS感染者の性別や年齢、どこで誰から感染したのかなど感染のつながりを分析した特設サイトを公開した。KBSのMERS情報サイトは、一目見ただけで分かるとして評判になり、SNSによくリンクされるようになった。