韓国政府は中高生からホワイトハッカー(ハッカーからシステムを守るハッカー、ハッキング技術をセキュリティ防衛のために使う人のこと)になるための英才教育を行い、専門技術を活かせる大学に進学させ、徴兵制で軍にいる間も腕を磨けるよう配慮する制度を導入することにした。

 世界中でサイバー攻撃による個人情報流出やデータ盗難などが多発している中、韓国でもモバイルバンキングの口座からお金が盗まれたり、個人情報を悪用されたりと、ハッキング事件が後を絶たない。最近はパソコンをハッキングして中にあるデータを勝手に暗号化し、データを元に戻したいならビットコインでお金を払えと要求する「身代金ハッカー」が登場し、大騒ぎになっている。

 企業の大事なデータを人質にする新しいハッキング手法で、韓国インターネット振興院や警察庁サイバー捜査隊は、セキュリティアップデートをして十分気をつけるように呼びかけている。こうした事件が続くことから、「ハッカーを捕まえるハッカー」として、ハッカー目線でシステムの脆弱性を先に見つけて補修するホワイトハッカーの需要が非常に高くなっている。

 4月22日、韓国のICT政策を担当する未来創造科学部(部は省)は、「K-ICTセキュリティ発展戦略」を発表した。(1)2015年度中にセキュリティ特化大学を3校新設、(2)軍ではサイバーセキュリティ特技兵士を選抜し、ホワイトハッカーが徴兵制で軍に行っている間にも実力を発揮できる場を設ける、(3)セキュリティ関連採用拡大、(4)セキュリティ分野に8100億ウォン(約900億円)投資、などの内容が含まれている。

 すべてのモノがインターネット上でつながるIoTが広がる中、サイバー攻撃は国家の混乱も誘発できる。未来創造科学部によれば、セキュリティ投資額がIT予算の5%を超える企業の割合は、米国40%、英国50%に対して、韓国は2.7%しかない。同部は「(韓国企業は)セキュリティを甘く見ている。今後はスマート自動車、スマート家電、ヘルスケアなどICT融合分野のセキュリティも強化する。革新的で、知能的で、利用者中心の便利なセキュリティ技術を開発できるよう支援する」としている。

 最も注目されたのは、「セキュリティ特化大学を新設して、ホワイトハッカーは修学能力試験(韓国のセンター試験)を受けなくても大学に入れるようにする」という項目である。大学入試が非常に厳しく、大学卒業後の就職はさらに厳しい韓国だけに、ホワイトハッカーになれば大学入試からも就活からも自由の身になれるのは、受験生にとってとても嬉しいことだ。

 韓国政府はこのセキュリティ発展戦略に先立ち、3月から中高校生を対象にした「情報保護英才教育院」の運営を開始した。首都圏の中高校生の中から選ばれた90人に、プログラミングとハッキングを教える教育施設である。韓国の大学教授とセキュリティ企業の社員が講師となり、3月から11月までハッキング技術からホワイトハッカーとしての心構えまで教えるという。

 「情報保護英才教育院」は書類選考と面接で教育生を選ぶが、90人募集に353人が応募したほどの人気だった。「情報保護英才教育院」を修了したら、セキュリティ特化大学に進学。その後、ホワイトハッカーとして政府機関や企業で活躍することになる。