欧州連合(EU)の欧州委員会(欧州委)は6月27日、米グーグルがEUの独占禁止法に違反するとして、過去最高額の制裁金24億2000万ユーロ(約3000億円)の支払いを命じた。欧州委はグーグルがインターネット検索市場の9割を占めているという支配的地位を乱用し、買い物検索で広告主の商品を優先的に表示するなど、公正な競争を阻害したと判定した。7年にも及ぶ調査の結果であり、韓国でもEUが下した「情報独占」に注目が集まっている。

 韓国の公正取引委員会は6月28日、グローバルIT企業の市場支配力乱用に対する規制方案を検討するとして、グーグルとフェイスブックのビッグデータと情報独占について調査して公正な競争ができる環境になるようにすると発表した。

韓国の公正取引委員会ホームページ
韓国の公正取引委員会ホームページ
(出所:韓国の公正取引委員会)
[画像のクリックで拡大表示]

 韓国は政権交代により、「財閥の死神」というニックネームを持つキム・サンゾ教授が公正取引委員会の委員長に就任した。キム委員長は長年、財閥が全産業にビジネスを拡大し利益を独占する問題について指摘してきただけに、「独占」に関しては敏感になっている。

 キム委員長はインタビューで、グローバルIT企業が韓国内でビッグデータを収集・活用している方法について調査し、独占規制および公正取引に関する法律に違反していないかを調べると発言した。「国民の税金で通信ネットワークを全国に設置した。彼ら(グーグルとフェイスブック)は何の費用も払わず情報だけを吸い取っている。公正取引委員会から見てこれは問題だ。ネットワーク効果を考えると、特定企業にデータを先占されたらそれで終わり。(先に始まった利用者が多いサービスを他の人も利用するので)後発事業者は入り込める余地がなくなる」。

 韓国の公正取引委員会は、EUと同じようにグーグルとフェイスブックが、韓国ネットユーザーがネットで何をしているのかといったデータを吸い取って独占、自社に有利な情報を優先的に提供して利益を上げるといった情報操作を懸念していた。

 特に米国のIT企業はビッグデータを活用したAIサービスに力を入れているため、とにかく大量のデータを集めて分析する必要がある。韓国人のデータをグーグルに吸い取られ、韓国の企業は何もできなくなるのではないかと見ている。

 検索は韓国企業のNAVERとDAUMのポータルサイトががっちり市場を握っているのでグーグルの影響力は少ない。だが、サムスン電子とLG電子のスマートフォンはアンドロイドOSなので、国民のほとんどがアンドロイド利用者、グーグルがプリインストールしたアプリを使っている。ここからいくらでもビッグデータとしてグーグルは情報を吸い上げられる。

 複数の韓国メディアは、グーグルのライバルといえるNAVER(LINEの親会社)の前副社長が大統領官邸の報道官になったことから、NAVERが主張していた「韓国人の情報主権を守る、グーグルから韓国のIT企業を守る」ための動きが強まるのではないかと分析していた。

 さらに、日本の公正取引委員会の発表も韓国に影響を与えた。公正取引委員会競争政策研究センターは6月6日、一部の企業によるデータの独占を防ぐため新しいガイドライン「データと競争政策に関する検討会」報告書を公表したのだ。韓国メディアはこの報告書について詳細に紹介し、日本を学ぶべきだと報じている。報告書では、「IoTの普及、AI技術の高度化等を背景に、データを事業に利用することで、生産性の向上や、消費者それぞれへの最適なサービス提供を実現できる可能性が増大。この最大化のため、事業者誰しもがデータの収集・利用を公正・自由な競争環境で行えることが必要」「大量のデータが一部の事業者に集中しつつあるとの指摘もあり、競争が制限され、消費者の利益が損なわれるおそれがある場合は、独占禁止法による迅速な対応が必要」との理由からビッグデータの独占を防ぐべきとしている。