韓国で、SNSなどに付属する無料のメッセンジャーを仕事で使うかどうかが、大きな論争を巻き起こしている。

 韓国では、2016年6月時点で国民の9割がスマートフォンを使い、加入者のほぼ全員がカカオトークやLINEなど無料メッセンジャーを使っている。チャットもテレビ電話も無料で利用できるからだ。メールより手軽ですぐ確認できるので、韓国では家族や友達同士だけでなく、取引先とも気軽にメッセンジャーで連絡を取り合うことが多い。

LINEでどしどし仕事の連絡をする上司が激増

 しかし、便利であるがゆえに問題が発生した。四六時中メッセンジャーで連絡してくる上司に、ストレスを感じる人が増えている問題である。自宅に帰った後でも休日でも、上司から「この前の添付ファイルもう一度送ってくれ」とか「今すぐ報告書を修正してくれ」「会議の日程を教えてくれ」といったメッセージが送られてくる。返事をしないと、後で何を言われるか分からない。こうなると、事実上無休で自宅勤務、時間外勤務をしているようなものである。

「業務時間外の業務指示カカオトーク禁止法」を提案した「共に民主党」のホームページ。
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 やっかいなのは、グループチャットである。韓国の会社ではよくチーム別にグループチャット部屋を作り、告知を流したり連絡を取り合ったりする。しかしオンライン匿名掲示板では、メッセンジャーによる悩みを書き込む会社員が後を絶たない。例えば、「部長がグループチャットに残した冗談やどうでもいい書き込みにすぐ返事をしなかったからといって、課長から仕事の意欲がないとののしられた。スマートフォンやめてガラケーに戻りたい」といった具合だ。

 韓国労働社会研究院が、6月中旬に公開したデータによると、アンケートに答えた人の86%は自宅に帰った後も業務目的でスマートフォンを使用し、週当たり平均11時間をメッセンジャーで指示された仕事に費やしていた(製造業とサービス業勤労者2402人を対象に調査)。