北朝鮮の公式ドメイン「.kp」を使うWebサイトが2014年12月22日の夜から23日午前にかけて、10時間ほどアクセスできなくなる事態が発生した。

 韓国政府は北朝鮮のWebサイトを不法・有害情報サイトに指定し、韓国のIPアドレスからはアクセスできないようにしている。IPを迂回して(韓国以外の国からアクセスしているように見せかけて)接続する方法もある。数年前、好奇心からか北朝鮮サイトを閲覧して会員登録までした韓国人がいたことが発覚し、問題になったこともある。

 しかし、マスコミや研究機関は北朝鮮の動向をモニタリングするために、アクセスできるようにしている。そのマスコミや研究機関でも、22日の夜から23日午前にかけてはアクセスできなくなったのだ。

 韓国と米国メディアは、北朝鮮のWebサイトにアクセスできなくなったのは、米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)に対するサイバー攻撃事件と関連があると見ている。

 SPEは、北朝鮮のキム・ジョンウン第一書記の暗殺シーンを含んだコメディ映画、「ザ・インタビュー」を12月25日に全米で公開する予定だった。ところが、「Guardians of Peace」と名乗る者がザ・インタビューの公開中止を求めて11月末、SPEに対してサイバー攻撃を仕掛け、封切前の映画ファイルや役員らの電子メール内容などを盗み取り、インターネット上に公開した。

 この事件を捜査している米FBI(米連邦捜査局)は12月19日、「SPEをサイバー攻撃した勢力は北朝鮮政府と関連があると判断するに十分な情報を集めた」と発表した。これを受けて米オバマ大統領は、「北朝鮮をテロ支援国家に再指定するかどうか検討している」「(北朝鮮側のサイバー攻撃に対して)相応の対応をする」と語った。

 その後、冒頭で述べたように、北朝鮮の新聞社や航空会社といった主なサイトにアクセスできなくなる事態が発生した。そのため韓国や米国メディアは、「もしかして米国の政府機関、あるいは米国のハッカーが北朝鮮をサイバー攻撃したのではないか」と推測する報道をした。しかしどちらの場合も、誰が攻撃したのかを明確にするのは難しいそうだ。

 韓国メディアは、「国家間のサイバー攻撃は秘密裏にかなりの頻度で起きているため、北朝鮮の国家機関がSPEをサイバー攻撃し、米国が仕返しに北朝鮮をサイバー攻撃したとしてもおかしくない。国ごとにサイバー攻撃を仕掛けたり防衛したりする組織もある」と報道している。サイバー攻撃は米国や北朝鮮だけの問題ではないのだ。

 米国は2009年、戦略司令部傘下にネットワーク、ソフトウエア、暗号の専門家を集めた「米合衆国サイバー司令部」を設立し、米軍内にあるサイバー部隊の司令塔の役割を担っている。