駐韓米軍基地にTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を配置することが決まってから、THAADの韓国配置に反対し続けていた中国の、韓国に対する圧力が一層強まっている。

 韓米両政府は、北朝鮮の弾道ミサイルに対応するため駐韓米軍基地にTHAAD配置を決めたが、中国は駐韓米軍のTHAADは距離が近いため中国軍までも監視できる、THAAD配置が北朝鮮を刺激して東アジアの緊張が高まる、という理由から反対してきた。

 「韓米両政府がTHAADの韓国配置を2017年7月までに終える方向で調整中」との報道が出た1月末から、観光や貿易、コンテンツ流通など経済面での中国の対韓圧力が続いている。ネットでは、中国のIPアドレスによるものとされるDDoS(分散型サービス妨害)攻撃やディフェイス攻撃も起こっている。

 DDoS攻撃とは、大量のパソコンなどから一斉に特定のWEBサイトにアクセスすることで通信容量をあふれさせ、WEBサイトの機能を利用できなくする攻撃。ディフェイス(deface)攻撃は、無断で他人のホームページのトップ画面を変えてしまうことである。

ロッテ免税店などが被害に遭う

 3月2日午前、ロッテ免税店の中国語ホームページ(免税品を注文・決済するB2Cサイト)がDDoS攻撃によりアクセスできなくなり、14時頃には韓国語、日本語、英語のホームページもアクセスできなくなった。ロッテ免税店のホームページは、前日の3月1日にもDDoS攻撃を受けていた。2日は3時間ほど免税店のサイトにアクセスできない状態が続き、ネット上で注文を受けられなかった。

ロッテ免税店の中国語サイト。3月2日にDDoS攻撃を受けた。韓国内では、韓中サイバー戦を懸念する声もあり、政府機関がモニタリングを強化した
ロッテ免税店の中国語サイト。3月2日にDDoS攻撃を受けた。韓国内では、韓中サイバー戦を懸念する声もあり、政府機関がモニタリングを強化した
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 複数の韓国メディアが、ロッテ免税店側のコメントとして「中国発IPアドレスによるDDoS攻撃」だと報じた。ロッテ免税店の売り上げは、7割が中国人観光客によるものである。そのため、DDoS攻撃で3時間注文を受け付けられなかっただけにも関わらず、数億ウォン(日本円にして数千万円)の損失が出たという。

 3月6日時点で、ロッテ免税店のホームページはつながる状態になった(ロッテ免税店はつながるが、ロッテグループのサイトはつながらない状態)。またロッテグループの中国ホームページは、2月28日から3月6日まで、つながらない状態が続いている。ロッテによると、通常の10~25倍ものトラフィックが発生しているので、サイトが麻痺してしまったという。中国のコミュニティサイトやSNSには、ロッテを批判する書き込みがどんどん増えている。

 3月2日には、ソウル市の関連サイトが「Panda Intelligence Bureau」を名乗る組織によりディフェイスされ、サイトにアクセスするとメイン画面にパンダのイラストと共に「ロッテをボイコットせよ。THAADの韓国配置に反対せよ」と書き込まれる事件が発生した。