2011年,東日本大震災およびそれに伴って大規模に進められた計画停電を経て,東京電力管内では電力供給の低下により広く節電を行うことが求められた.電力総需要の約30%を占める家庭部門は,業務部門および産業部門と比較し,電力需要の抑制の呼びかけにどのくらいの電力利用者が対応し,節電を行うのかが未知数であるという課題があった.それに対し,筆者らは,スマートフォンなどの情報端末を通じて参加者の節電の取り組み情報を収集し,収集した情報を分析し,各電力管内での電力使用率などの情報とともにスマートフォンやWebサイトで可視化するシステムを構築した.そして,そのシステムを用いて,ソーシャル・キャピタルと節電行動の関係を実際の節電履歴データを取得して分析すること,およびソーシャル・キャピタルが強くない中でも節電を行う仕組みの実現に寄与することを目的とした実証実験「停電回避プロジェクト」を夏の電力需要が増加する2011年7月1日から100日間実施した.結果として,①身近なコミュニティにおける節電行動の可視化,②身近なコミュニティでのランキング表示など自身のポジションの可視化,③他の利用者との接続が常時されているというリアルタイム性,の3つを実現し,ソーシャル・キャピタルの度合いが高くない電力利用者に対しても節電行動を促せることが分かった.