情報通信技術が教育に及ぼす影響は大きい.ここでは,eラーニングの学習環境やコンテンツの作成にかかわる3氏に話を伺った.今,注目されているMOOCを始め,それを支えるプラットフォームの翻訳,コンテンツのディレクションや標準化などについて,各氏の経験に基づくノウハウなどが語られた.

竹村 本日は「ICTと教育」という特集号で招待論文を書いていただいた3名の方に来ていただいて,お話を伺いたいと思います.

 最初に自己紹介を兼ねて,現在のご所属と,ICTと教育に関してどういう立場でかかわっていらっしゃるかというのを簡単にご紹介いただけますか.では,常盤先生からお願いします.

常盤祐司氏
常盤祐司氏
法政大学 情報メディア教育研究センター教授.石川島播磨重工業(株)(現,(株)IHI),日本アイ・ビー・エム(株)を経て2005年より現職.大学における教育・研究・事務・経営システムの研究およびオープンソースソフトウェアを中心としたシステム開発に従事.

常盤 法政大学の常盤と申します.所属は情報メディア教育研究センターです.その研究センターのミッションとして,ITを活用した教育および研究支援をしています.

 約10年にわたってeラーニングにかかわるシステム開発・研究をしてきましたが,それだけではなかなかうまく学内には展開できないということが分かってきました.法政大学ではFD推進センターという,FD(Faculty Development)を担当するセンターが2005年にできました.そこはシステムを開発するというミッションを持っていません.ただし,FDではITを活用した教育改善もあるので,次第にFD推進センターにもかかわるようになってきました.このような体制になると,研究センターで開発したシステムを,FD推進センターが学内展開していくという役割分担が形成され,両センターが両輪となってITを活用したFDがうまく回り出したと思っています.

竹村 では,重田先生,お願いします.

重田勝介氏
重田勝介氏
北海道大学情報基盤センター准教授ならびに高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター副センター長.大阪大学大学院卒(博士人間科学).東京大学助教,UCバークレー客員研究員を経て現職.研究分野は教育工学・オープンエデュケーション.

重田 北海道大学の重田と申します.

 私は教育工学の研究者で,教育環境にICTを導入した実践研究の評価や,ここ4~5年はオープンエデュケーションの動向調査をし,私自身,今年の夏にJMOOCでMOOCを開きまして,そういう実践をやっています.

 所属は2つありまして,1つ目は情報基盤センターで,大学の中の教育情報システムの運用にかかわっております.

 もう1つの方が今回のデジタルプラクティスの論文にかかわる部分なのですけれども,高等教育推進機構という,全学教育を支援する組織の中に,オープンエデュケーションセンターというのがこの4月にできまして,副センター長をやらせていただいております.

 北大に来る前は,東京大学でオープンコースウェアの仕事をしておりまして,北海道大学ではこの4月から,教育のオープン化の仕事や,いわゆるOER(Open Education Resources)と呼ばれる,オープン教育資源,オープン教材というものを,学内の教育に利活用することで教育の質を高めることを全学的に支援しています.

 センターでは,学内の先生方にも協力いただいて,普段の授業で使うことができるようなオープン教材をつくって,それを使った授業づくりを一緒にしています.そのためにセンターの中にある映像制作や著作権処理,Web制作を行うスタッフと一緒に,先生方をバックアップするということもやっています.