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情報処理学会デジタルプラクティス

SNSプライバシー保護とリスク管理の検討

─ソーシャルモニタリングツールの開発に向けて─

山下 晃弘=東京工業高等専門学校、上村 卓史、川村 秀憲=北海道大学、鈴木 恵二=北海道大学 2016/06/03 ITpro
出典:情報処理学会デジタルプラクティス Vol.6 No.2 Apr.2015
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

家族や友人のみならず,就職活動やビジネスにおいてもSNSの利用が一般化している.一方で,炎上やネットストーカーに代表されるプライバシーリスクも顕在化してきた.スマホのアプリやサービスの選択肢が増える一方で,それらの情報源から第三者が個人情報を容易に推測可能な環境が整いつつある.特定のSNS上では安全でも,それらが結びつくことで生じるリスクは目視や手作業での把握や管理が難しい.筆者らは,多様化するSNSにおいて,利用者がプライバシーリスクを正確に把握し,適切な管理下で安全に利用可能な環境作りについて検討してきた.また独自にソーシャルモニタリングツールを開発して運用し,SNSに内在するさまざまなリスクについて知見を得てきた.本稿ではその取り組みを紹介し,今後さらに多様化が予想されるSNS利用形態とプライバシーリスク管理の課題について検討する.

1.はじめに

 平成25年度情報通信白書[1]によれば,スマートフォン普及率は38.2%,SNS(Social Networking Service)利用率はFacebook 40.4%,Twitter 33.8%,Google+ 10.6%であった.「これまでにソーシャルメディアを利用したことはない」との回答は4.1%で,インターネット利用者の多くは何らかのSNSとかかわりを持っている.

 今やSNSは家族や友人間だけではなく,就職活動やビジネスにも利用され,個人的な連絡はメールよりもSNSを利用するというユーザも少なくない.10代20代のディジタルネイティブ世代は一層抵抗なくWeb上でコミュニケーションを取り,SNSと無縁の利用者は若い世代ほど少数派といえるだろう.

 一方で,Webの露出性や伝搬力,悪意を持つユーザへの認識や対処の甘さから,さまざまなリスクも顕在化してきた.「炎上」はその典型例である.いたずら心による投稿が批判の標的となり,実名,性別,年齢,住所,顔写真,家族や友人関係,所属企業や学校名等が瞬く間に調べ上げられてさらされる事案は,枚挙にいとまがない.炎上のように顕在化する事例だけではなく,ネットストーカーやなりすましによる嫌がらせ等の潜在的リスクも指摘され,無防備なSNS利用が原因で,気付いたときには手遅れといった事態が社会問題化している.

 いったんネット上にさらされた情報を完全に抹消することは事実上不可能である.標的とされた個人は,進学,就職,結婚といった社会生活の根底を脅かされかねない.このようなリスクは,Webの匿名性やSNSの秘匿性の過信,スマホの普及で実生活とWebが密接に結びつくことも要因の1つと考えられる.

 そこで筆者らは,SNS利用上のリスクを体系的に捉え,過去に顕在化した事例の詳細な分析と,利用者自身が適切に情報管理を行い,安心してSNSを利用するためのサポートツールの開発に取り組んできた.このようなサービス設計を行う際,単に現状の課題を研究要素と捉えて分析するだけではなく,多様に変化するSNSの利用形態をリアルタイムに捉え,利用者の利便性のみならず社会的課題を先回りして把握し,適切な対処法を検討するプラットフォームが必要である.我々はSNS利用をサポートする独自のシステムを,大学発ベンチャー企業である(株)調和技研と共同開発し,恒常的なサービスとして運用してきた.

 本論文では,個人情報を含め,プライバシー侵害の標的となりやすい情報をプライバシー情報と定義する.また,プライバシー情報の意図しない第三者への流出を防ぐことをプライバシー保護と呼ぶ.その上で,SNS利用におけるプライバシー保護とリスク管理について,筆者らの取り組みから得られた知見や課題を述べる.また,筆者らが開発するソーシャルモニタリングツールについて報告する.

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