実世界に設置したセンサノードから,多種多様なセンサデータを収集し活用するクラウドサービスが期待されている.このようなクラウドサービスの普及には,クラウドにセンサデータを届けるセンサネットワークの高信頼化および高安全化と省電力化が不可欠である.本論文では,センサネットワークを高信頼および高安全に運用可能にしつつも省電力化を図る省電力センサネットワーク技術を提案する.提案技術の省電力効果を計算機シミュレーションで評価するとともに,福島県の高等学校に構築した,合計約60台のセンサノードからなるセンサネットワークを用いた実証実験について紹介する.

1.はじめに

 実世界に設置したセンサノードから,多種多様なセンサデータを収集し活用するクラウドサービスが期待されている(図1).たとえば,HEMS (Home Energy Management System),BEMS (Building Energy Management System) などの建物内の電力使用状況を可視化するシステム[1]や,農地の温湿度や土壌成分などを観測するシステム[2]は,社会活動や企業活動などの効率化,付加価値化を実現する.これらのサービスは,クラウドと,センサデータを収集するセンサネットワークにより実現される.

図1●センサデータを用いたクラウドサービス
図1●センサデータを用いたクラウドサービス
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 センサデータを用いたクラウドサービスの普及には,センサネットワークの高信頼化および高安全化が必要な上,さらに省電力化が不可欠である.特に,野外や屋外に設置されることが多いセンサネットワークには,効率的なデータ送信とノード管理による安定的運用によりシステムの信頼性を高める必要があり,また,センサデータの盗聴やノード盗難への対策による高い安全性の確保が必要である.また,一般的にバッテリ駆動のセンサノードを用いるセンサネットワークでは,ノードの消費電力を抑制し,ネットワークの長期運用を実現する必要もある.

 本論文では,高信頼化および高安全化を実現しつつも省電力化を図る省電力センサネットワーク技術を提案し,提案技術の開発および性能評価と実際のセンサネットワークを用いた実証実験について述べる.実センサネットワークを用いた実証実験においては,福島県の高等学校に合計約60台のセンサノードによるセンサネットワークを構築し,提案技術の実用性を検証した.