近年,サーバやネットワーク技術等の進展により,クラウドサービスが急速に普及し始めている.今後,クラウドは交通管制やスマートシティ,電力制御等に代表される社会インフラ分野へも利用シーンが広がると期待されるが,即時性を要するサービスではデータセンタまでの長距離通信に起因する応答性劣化を解消する必要がある.本稿では,クラウドの応答性を改善するためのリアルタイム分散クラウド技術の開発に関して説明し,実証実験によって軽量のセンサアプリケーションであればクラウドシステムでも10ミリ秒オーダの応答性能を達成できること,オンプレミス設備も連携利用し応答性の良い小規模データセンタを構成できること,障害時のサービス継続性の効果等を示し,将来的な応用の可能性に関して述べる.

1.はじめに

 近年,ネットワークを介してデータセンタのサーバやストレージ等のICT (Information and Communicaton Technology) 設備を利用するクラウドコンピューティング(以下,クラウド)が,個人ユーザによる電子メールやWebショッピング,省庁や自治体,大学,企業ユーザによるフロント業務等のノンコア業務を中心に広く普及している.今後,クラウドは,企業等でも機密情報を扱うコア業務や,さらには,交通管制やスマートシティ,電力制御等に代表される社会インフラ分野へも利用シーンが広がることが期待される[1],[2],[3].

 本稿では,こうした企業等のコア業務や社会インフラ分野にクラウドを適用する際の課題と,それを解決するための技術,実証実験による評価結果を説明し,これらの技術の将来的な応用に関して述べる.