国立病院機構本部診療情報分析部は2010年度, 診療情報データバンクを整備し, 機構144の病院から診療データを集め分析を行っている. ここでは収集データの特性と問題点, 分析のためのデータセットの構築に至るまでの各種問題の解決,およびそれらを元に行っている分析を紹介する.

1.はじめに

 国立病院機構本部総合研究センター診療情報分析部は2010年4月に発足し,機構144病院から診療データを収集し,分析を行っている.部長(医師),研究員(いずれも医療職)3名,SE4名(いずれも非医療職),事務員1名の9名で活動しており,医療を可視化し,比較するためのデータベースの構築と,それによる病院の客観的な評価が部のミッションである.初年度はひとまず41病院個別のレポートの作成を試みた.また,医療の質を定量的に評価するための臨床評価指標事業を機構本部より引き継ぎ,発展させることとした.

 医療情報は主に2 通りの用途に活用されている.1つはある特定の個人の病気を治癒させるためのもので,カルテやレントゲン等の検査記録がこれに当たる.もう1つは不特定多数の診療記録を収集し,それらを分析することで臨床的・経営的知見を得るものである.本論文では,後者について,収集データの特性と問題点,分析のためのデータセットの構築に至るまでの各種問題の解決,それらを元に行っている分析について述べる.