携帯電話を取りまくネットワーク環境や携帯電話の処理性能,蓄積容量はこの10年で目覚ましい進化を遂げている.また,携帯電話自体も比較的限られたサービスや操作を提供していたフィーチャーフォンから,より直感的な操作と,パソコンと同じようにオープンなサービス・アプリケーション環境のスマートフォンへと大きく変貌してきている.音楽サービスについては,携帯電話の登場初期は着信メロディなど比較的シンプルなサービスでスタートしたが,このような環境変化の中でどのような変化や進化があったか,また今後どのようなことが予想できるのかについて,音楽サービスとして提供している,「LISMO」の例を用いて述べる.

1.はじめに

 モバイルサービスにおける,音楽サービスについては,携帯電話がパーソナルな持ち物になるに従い,電子メールなどと同様に身近なサービスとして普及してきた.携帯電話と音楽のかかわりについては,まず着信時にメロディを奏でる,「着メロ?」サービスに始まり,携帯電話上で楽曲をダウンロードして楽しむ,「着うたフル?」によって本格的に音楽を楽しめるようになった.特に,定額制のデータ通信料金の普及に伴い,このような有料音楽配信は大きく成長してきた.

 このような中で,KDDIでは総合音楽サービスとして「LISMO」(リスモ,au LISTEN MOBILE SERVICE)を2006年1月から開始した.当時はフィーチャーフォンにおいて全機種統一した音楽プレイヤー(au Music Player)や,パソコンとコンテンツ連携するためのPC連携ソフト(au Music Port)としてサービスを提供した.その後,使いやすさをさらに追及するために,検索機能の充実(LISMO Music Search)や,非パソコンユーザでも手軽にCDから楽曲転送できるような専用機(au BOX)などにより進化してきた.しかしながら,スマートフォンの登場により音楽を聴くスタイルも大きく多様化し,LISMO自体もラジオ機能や楽曲聞き放題サービスなど,きめ細かなニーズに対応するように変化してきた.

 本稿では,まず音楽産業全体の状況を俯瞰した後,モバイルサービスにおけるLISMOがどのように生まれ,携帯電話環境の変化に応じてどのように進化し,変化してきたかについて述べる.