ユーザがAndroidスマートフォン(以降,スマートフォン)を購入するときに重視する項目として,電池持ちが挙げられる.筆者らは電池持ちを長くするために,低電力で表示可能なIGZO液晶を搭載したスマートフォンを開発した.また,スマートフォン購入後も電池持ちが長いことをユーザに実感してもらうため,アプリケーションの動作を調査し,消費電流の改善を行った.アプリケーションのどのような動作が端末全体の電池持ちに大きく影響するのかを述べる.
1.はじめに
MMD研究所の調査によると,スマートフォン購入時に重視する項目として,電池持ち(40.9%)が挙げられる[1].これは,スマートフォンの電池持ちに関してユーザが満足していないことの裏返しと考えられる.筆者らは低電力な周辺装置(以降,デバイス)を搭載し,最適なソフトウェア制御を行った電池持ちが長いスマートフォンを提供することで,ユーザの満足度を向上させようと考えた.
また,スマートフォンを購入したユーザは,アプリケーションを自由にダウンロードして使用することができる.購入後も電池持ちが長いことをユーザに実感してもらうためには,アプリケーションの動作が電池持ちにどの程度影響を与えているか知る必要がある.しかし,それらは目に見えるものではないため,特殊な調査を必要とする.
本稿では,まず,当社スマートフォンの電池持ちを改善するアプローチについて説明する.次に,電池持ちを長くするために,アプリケーション開発者と行っている取り組みを紹介する.
電池持ちに対する不満を
解消したい
2.電池持ちを改善するための設計思想
電池持ちを改善するためには,どこに問題があるのか,体系的に整理する必要がある.筆者らは,電池持ちの改善には,ハードウェアデザイン,システムアーキテクチャ,アプリケーションの調査といった積み上げが必要と考えた(図1).
はじめに,スマートフォン開発の上流工程にあるハードウェアデザインは,電池持ちを改善するためにシステム全体の消費電流を考慮し,最適な低電力デバイスを選択する.選択するデバイスによって,消費電流は大きく変動し,選択するポイントとして,デバイス動作中の消費電流,起動時間,終了時間,電力効率,温度特性などが挙げられる.
次に,実装された低電力デバイスを正しく制御するためのシステムアーキテクチャが必要である.「電池持ちの長いスマートフォン」を実現するためには,
- ユーザがスマートフォンを操作するとき,実装したデバイスを一定時間以内に応答させること
- ユーザがスマートフォンを操作していないとき,必要なデバイスのみ動作させること
上記2点が必要であり,第3章に詳細を説明する.
最後に,アプリケーションの動作次第で,電池持ちが大きく左右されるため,アプリケーションの動作を調査する際に筆者らがどういった取り組みを行っているか,第4章に説明する.