福島第一原発事故以来,電力の安定供給・環境負荷低減の観点から高効率ガスタービンへの期待が高まっている.当社ではガスタービンの大容量・高効率化,高信頼性化を目的とした技術開発を進め,タービン入口温度1,600℃級でガスタービンコンバインドサイクル効率61.5%以上も達成可能となるM501J形を2011年に開発し,さらなる高効率化を目指し研究開発を行っている.当社では産業用ガスタービンの開発・製造において2000年から3Dプリンタを活用しており,本稿では当社における3Dプリンタの活用の取り組みを紹介する.なお,3Dプリンタは付加製造(Additive Manufacturing)技術と国際的には呼ばれているが,本稿ではあえて3Dプリンタと表記する.

1.三菱ガスタービンの開発経緯

 ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)の高効率化にはガスタービンの高温化が重要な役割を果たしている.当社は,1984年にタービン入口温度1,100℃級M701D形ガスタービンを開発して以来,ガスタービンコンバインドサイクルプラントの大容量・高効率化,高信頼性化を目的とした技術開発を進め,タービン入口温度1,600℃級でGTCC熱効率61.5%以上(低位発熱量LHVベース)も達成可能となるM501J形を2011年に開発した(図1).

図1●三菱ガスタービン機種開発の変遷
図1●三菱ガスタービン機種開発の変遷
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 ガスタービンの高温化にはタービン翼や燃焼器などいわゆる高温部品の性能や信頼性の向上が必須であり,金属が溶融しないメタル温度を制限値内に抑える必要がある.ガスタービンの高温化に伴い高温部品の構造は複雑化してきている(図2図3)[1],[2].

図2●タービン冷却構造の変遷(1段動翼)
図2●タービン冷却構造の変遷(1段動翼)
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図3●タービン冷却構造の変遷(1段静翼)
図3●タービン冷却構造の変遷(1段静翼)
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