亀田総合病院では,患者様中心の医療情報ネットワークPLANETシステムを構築した.患者様にICカードを発行し,インターネットを活用して自宅などから自身の診療情報(カルテ情報,薬歴,検査,画像データなど)を閲覧できるネットワークシステムである.現在,5,500名の患者様が登録し利用する,大規模な医療情報ネットワークシステムとして発展を続けている.本論文では,その必要性と構築から運用までの工夫を紹介する.

1.はじめに

 千葉県鴨川市にある亀田総合病院では,2002年に患者様中心の医療情報ネットワーク「PLANET(プラネット)
(PatientcenteredLifetimeAnywhereonthePLANETNET
workingsystem)」を構築した.

 患者様がICカード(PLANETカード)を用い,インターネットを活用して自宅や無料設置端末などから自身のカルテの参照や自己記録ができるネットワークシステムである.全国において,医師やその他スタッフの記載するカルテ情報からレポートなどの診療情報をそのまま開示している病院はおそらく当院のみであろう.

 11年間の運用を経て有料会員制(登録費用1,000円以降2年ごとに更新費用1,000円)のPLANETは現在,5,500名の患者様が利用する大規模な医療情報ネットワークシステムとして運用を行っている.

 本論文では,連携医療機関への地域連携サービスと診療情報閲覧サービスを行うPLANETシステムの患者様への診療情報閲覧サービス部分について,構築と運用に伴った課題とその解決策,今後の取り組みについて紹介する.

2.PLANETシステムの必要性

2.1 診療情報の提供による医療・介護の効率化

 診療情報の提供による医療・介護の効率化加速する高齢化に伴い医療・介護の需要は拡大する一方であり,医療・介護受療率の増加が予測されるように当病院においても外来・入院患者数が増加している.今後,医療連携だけでは拡大する患者様をケアすることは不可能であり,一般床,療養病床,介護施設での受け入れが困難を極めることが予測される.

 そこで,当院では「質の高い正確な診療情報を患者様に提供する環境整備」を行うこととし,具体的にはインターネットを活用し,患者様が見たい時に自身の診療情報を閲覧できる仕組みを構築することとした.提供する診療情報は業務用電子カルテと同等の情報量とした.また,治療を行う上での診断過程に関する情報(診断が確定する前の経過情報)は,患者様が閲覧すると混乱するため,患者様と共有することは不適当であるという意見があるが,診断過程に関する情報こそ,医療に関する重要な診療情報であり,この情報を共有することにより,患者様は自らの疾病・症状などへの理解が深まり,適切な治療法などを選択できるようになると考えた.